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本連載に登場した、気鋭のビジネスリーダーやプロフェッショナルなど10人の子育て論をまとめた『子育て経営学』

 「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 今回、スペシャル枠として話を聞いたのは、NPO法人コヂカラ・ニッポンの川島高之代表。大手総合商社の管理職や上場企業の社長を務めながらも、積極的に子育てに関わってきた川島氏。最近では「イクボスの伝道師」として年300以上の講演依頼を受けている。同僚や部下のワークライフバランスを応援しながら、組織として結果を出す「イクボス」が増えるには、どういった工夫が必要なのだろうか。話を聞いた。今回はその前編。

NPO法人コヂカラ・ニッポン代表 川島高之(かわしま・たかゆき)氏
1964年神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工部卒業後、87年に三井物産に入社。2012年、同社グループの上場会社の社長に就任。在任中に職場の業務改善を実施し、残業時間を4分の1まで削減。一方で利益は3年間で8割増、時価総額を2倍に。一児の父としてPTA会長などの地域活動にも積極的に参加した。大手総合商社の管理職、上場会社の社長の経験をもとに「イクボス」の普及のための活動を始め、16年に早期退職し、独立。企業向け講演・研修は年間300本以上。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事、ライフシフト・ジャパン取締役も務める。取材時、54歳。神奈川県在住。共働きで管理職の妻は単身赴任中。長男との2人暮らし(取材日/2018年9月10日、撮影/鈴木愛子)

大手総合商社の管理職、上場企業の社長職を務めながら、積極的に子育てに参加されてきた川島さんは、イクボスの定義と10カ条を作り、「イクボスの伝道師」として活躍しています。「イクボス」とは職場で働く部下やスタッフのワークライフバランスを応援しながら、組織として求められる結果も出し、自身の人生を充実させる管理職や経営者のこと。現在は年間300以上の講演依頼を受けているほど注目されているキーワードになっています。“元祖イクボス”の川島さんは今の若い男性たちの子育てをどう見ていますか。

川島氏(以下、川島):この連載(「僕らの子育て」)や書籍『子育て経営学』に登場するのは、40代以下の男性リーダーに限っているそうですね。

 読ませていただくと、実にスマートでカッコイイ!

 僕たちの時代には考えられないほど、男性が子育てに参加しやすい環境が整ってきた様子が見てとれるし、単純にうらやましいとも思います。

 今は家族写真もスマホでパッと撮れて保存できるけれど、僕らの時代はフィルムカメラでたくさん撮っても、現像し忘れたりして……。うちはずっと夫婦で共働きでしたが、予定も紙のカレンダーで共有していて、せっかく書き込んでも妻に上書きされたりしていました(笑)。

 「子育てをする男性」に対する世間のイメージも、随分と変わりました。

 昔は「重要な仕事は任されないしがない男性」と思われがちだったけれど、今は男性も堂々と公園でバギーを押している。保育園の送迎も、今は2~3割が父親になっていますよね。

 若い経営者たちが率先してその空気をつくってきていることが頼もしく感じます。

 一方、経営者の視点で見れば、それは当然の流れのようにも感じます。

 いわゆるベンチャー企業の経営は、重厚長大な産業と違って、ビルや鉱山といった資産を持ちません。常に新しいことをやっていかないと闘えませんし、それを生み出すのは人です。

 その危機感が、リモートワークや子連れ出勤奨励といった柔軟な働き方の施策につながっているのでしょう。

 そして、それが人材戦略となって、結果として経営力を高めている。僕らがこの世界に引き込んだサイボウズの青野慶久社長もまさにその代表例です。