どっぷりハマれることはぜひ続けたらいい

デジタルデバイスに触れさせる時間も制限した方がいいのでは、と不安に感じる親もいます。佐々木さんはいかがですか。

佐々木:本人が興味があるのなら、どんどん触れさせていいと思います。ゲームに1日中どっぷりハマれるのも才能だし、飯を食うのも忘れて夢中になるようなことがあれば、是非続けた方がいい。

 かといって、「続ける」ことに無理にこだわる必要もなくて、飽きたら素直に手放せばいい。

 新しいことにどんどん触れて、興味が移ったら、移ったでよし。いろんなことをやってみて、結果的に続くものが見つかればハッピーなんじゃないですか。

佐々木さん自身は、どんな育てられ方をしたのですか。多くの人に支持されるサービスをリリースする企業を創業する職業観の原点は。

佐々木:うちの親は、ビジネスに対して貪欲なタイプではなくて、どちらかというと能天気なタイプです。実家は美容室を経営していたので、店の上に家がありました。

 子どもの頃は、「お客さんがいるんだから、店に降りてくる時は笑顔でいなさい」と言われていたのは、ずっと残っていますね。それ以外は、「こういう仕事に就け」とか言われた記憶はなくて、たまに家族そろって食事をする時には、芸能人の髪型の話ばっかりしてました(笑)。

 今の僕につながるという意味でしいて言えば、僕が小学1年生の頃に亡くなったおじいちゃんは、「破天荒な人だった」とよく聞かされていました。

 祖父は戦後に東京の下町で美容院を始めたのですが、当時は「女性の職業」というイメージが強かった美容師に、あえて男性を採用して、マダム向けの店づくりをした、と。

 その「誰もやっていない道を探す」姿勢は、今の僕の価値観に近いし、面白いなと思って聞いていました。突然「ブラジルに移住する」とか言い出したり。よく家族を慌てさせていたらしいです。

流行りの仕事には飛びつかない方がいい

お子さんが将来、「仕事ってどうやって選んだらいいの?」と聞いてきたら、なんと答えたいですか。

佐々木:まず、「自分で考えた方がいいよ」と言うと思いますが、一つ伝えるとしたら、「流行りや人気には、あまり飛びつかない方がいい」ということかな。

 やっぱり既に世の中で流行っているということは、それをやりたいと考える人がたくさんいるわけで、競争も激しくなる。その競争に勝って世の中にインパクトを与えるには、相当の努力が必要になります。

 けれど、ちょっと目線を変えれば、まだ解決されていない課題はたくさんある。そちらに気づいて解決しようとエネルギーを注ぐ方が、競争に有利になって、経済的にも豊かになるし、精神的にも幸せで楽しいんじゃないかなと思います。

 特に大事だと思うのは精神的な充足感。「何かを追いかけている」状態よりも、「自分で見つけた問題を解決しようとしている」状態の方が、多分ハッピーです。

 どう感じるかは人それぞれかもしれないけれど、僕自身の実感でいうと、まだ誰もやっていなかったクラウド会計ソフトの原型を、Googleで働きながらつくり始めた時から、ずっと心は満たされているような気がします。

 でもね、今、僕らが子どものためにいくら考えても、彼女たちが大人になる頃の世界は、きっと何もかも、前提が変わっているはずなんです。職業観や死生観も変わっているだろうし、何をもって幸せかという定義も揺れ動く。

 だから、あまり「これを伝えていこう」と、深く考えていません。