「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 連載15回目に登場するのは、産業を共に創るトップリーダーが集まるコミュニティ「Industry Co-Creation(ICC)」を展開するICCパートナーズ代表の小林雅氏。年2回行われるイベント「ICCサミット」には200人以上が登壇し、総勢900人以上が参加する。ベンチャー経営者をはじめ、多様な人材との交流の多い小林氏は、わが子をどのように育てているのか、話を聞いた。今回はその後編。

ICCパートナーズ代表取締役CEO(最高経営責任者)
小林雅(こばやし・まさし)氏

1974年埼玉県生まれ。東京大学卒業後、1998年にアーサー・D・リトル・ジャパンに入社。主に国内大手製造業の新規事業立案を担当した後、2001年エイパックス・グロービス・パートナーズ(当時)に入社。2004年、29歳で同社のパートナーに就任。同年からインターネット業界の経営幹部が集うカンファレンス「NILS」の立ち上げに参画し、以後10年以上に渡って企画・運営に携わる。2007年、ベンチャーキャピタルを共同創業し、累計150億円規模のファンドを育てた後、2016年にICCパートナーズを設立。産業を共に創るトップリーダーが集まるコミュニティ「Industry Co-Creation(ICC)」を展開する。年2回行われるイベント「ICCサミット」には200人以上が登壇し、総勢900人以上が参加する。取材時、44歳。都内在住。1歳下の妻、13歳の長女、9歳の次女との4人暮らし(取材日/2018年8月6日、インタビュー撮影/鈴木愛子、ほかも同じ)

インタビューの前編(「学校独自の教育方針こそ私立小学校の魅力」)で小林さんは、子育てにおいては「本物に触れる」経験を重視しているとおっしゃいました。その理由は何でしょうか。

小林氏(以下、小林):仕事上、いろいろな分野のリーダーからお話を聞く機会が多いのですが、やはり「知覚しないことは判断できない」「経験しないと判断できない」と感じることは多いですね。

 僕自身が子どもの頃の環境と、娘たちの環境はまるっきり違いますが、体験できることはできるだけたくさん体験させてあげたいと思います。

 それもできるだけ早い方がいい。受け売りの言葉ですが、「チャンスは貯金できない」というのが、僕も実感しているところです。

チャンスが目の前にあるなら、つかむ判断を先送りしてはいけない、と。

小林:そうです。投資の仕事を長くやっていた経験から思うのは、半年でも数カ月でも早く決断することが、先々の大きな差を生むことがある。

 例えばパリに行って本物に触れたことがきっかけで、娘たちが「フランス語を勉強したい」と行動するかもしれない。それが今なのか1年後かどうかで、その後の人生にも大きく影響する可能性は多分にあると思うのです。

 人生の大きな判断をする時に頼りになるのは情報よりも実体験。だから大学生になった時、「○○したいからバイトでお金を貯める」という発想には反対で、お金を借りてでも早くやった方がいいと考えます。

本連載に登場した、気鋭のビジネスリーダーやプロフェッショナルなど10人の子育て論をまとめた『子育て経営学』

 なんでも早めに試して、ダメならやり直す。その繰り返しでベターな道を探る人生がいいと思います。

 一番良くないのは、何もチャレンジせずに日常を過ごし、40歳くらいになって「やっぱり人生間違っていた!」と後悔しまうパターン。

 一方で矛盾しますが、「人生はいくつになっても再スタートを切れる」というのも僕の実体験で言えることです。つまり、トライ&エラーを繰り返して、自分の力で正解を見つけることが大事。決断したら、それを正解にできるよう、方法論を考えて一心に進むしかない。そう思っています。