仕事が忙しいなら、「仕分け」をしたらいい

父になって仕事観の変化はありましたか?

加茂:大いにありますね。そもそも娘の誕生が起業と深くつながっているという経緯もありますし、働き方の面でも、まるっきり変わりました。

 以前は深夜残業が当たり前の「仕事を食べて生きている」ようなタイプでしたが、先ほどお話ししたように、立ち会い出産の夜をきっかけに、人生の第2章が始まったような感じです。

 「仕事は何時間あっても終わらない」と思っていましたが、10時間かかる業務を8時間で終わらせようと本気で取り組めば、できるものなんですよね。これまでは単に頭を使って工夫してこなかっただけなのだと反省しました。

子どもを持つことに足踏みする理由の一つとして、「今の仕事が忙し過ぎて、子育ての時間を割く余裕がない」と考える男性は少なくないと思います。両立策を教えていただけますか。

加茂:やはり、仕事の仕分けを試してみることではないでしょうか。本当に自分がやるべきことと、ほかの人にお願いできることを振り分けてみる。結果、部下や後輩を育てるチャンスも生まれるでしょうし、人に任せる訓練をすることはリーダーシップを養うことにもつながると思います。

 子どもが産まれると、半ば強制的に自由な時間は減りますので、生産性を強化するための“強制リセット”として子育てを前向きにとらえてもいいのでは。

将来、娘さんに職業選びのアドバイスをするとしたら、どんなことを伝えたいですか。

加茂:僕自身、今すごく充実した毎日を送れているのは、自分が本当にやりたい、実現したいと思える仕事に出合えているからです。彼女にも、そんな仕事に出合ってほしいなと思います。

 自分で見つけることに意味があるので、僕から具体的に「こういう仕事がいいんじゃないか」とアドバイスをすることはきっとないと思います。見守る、に徹したいです。

インディ・ジョーンズに憧れて早稲田大学に

加茂さんは最初の仕事として会計士を選んでいますが、今の仕事に至った理由は何でしょう。

加茂:実は、大学卒業後に会計士の仕事を選んだのは、通過点であり、成り行きだったんです。もともと子どもの頃になりたかったのは、考古学者。映画『インディ・ジョーンズ』を観て、「カッコいい! この道しかない」と、遺跡を掘る仕事に憧れました。

 考古学の権威、吉村作治先生に直接指導を受けようと、早稲田大学の教育学部を受験したのですが、残念ながら不合格。同じ大学の商学部には受かったので、「どこかで接点があるかもしれない」と入学しました。

 商学部で講義を受けているうちに、「考古学者はなかなか稼ぐのが難しいらしい。ならば何かほかのビジネスで稼いでから、考古学に打ち込もう」と方針転換したのが大学3年生の頃でした。

 会計士の知人から「こんなにやりがいのある仕事なんだよ」と話を聞いて、資格試験にトライしてみることにしました。数字は昔から嫌いではなかったこともあって、大学4年の時に合格することができました。

 会計士として働くようになってから、いろんなベンチャー企業経営者に出会ううちに、「自分で事業を始めてみたい。どうせやるなら世の中のためになる仕事を」という思いが膨らんで、今に至るというわけです。

 ですので、今はこの仕事に夢中ですが、いつか引退したら考古学の夢を追うつもりです。ずっと土を掘る生活に浸りたいと思っています。今は、娘との砂場遊びでたくさん土を掘りながら、時々出てくる貝殻のカケラなどにロマンを感じています(笑)。