「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。
連載13回目に登場するのは、家事代行サービスを手掛けるベンチャー、CaSy(カジー)を経営する加茂雄一氏。妻の妊娠をきっかけに家事代行サービスを利用した経験から、家事代行サービスの必要性に気づき、カジーを立ち上げた。現在は1児の父親となった加茂氏は今、どのように日常の子育てや家事に向き合っているのか。話を聞いた。今回はその前編。

家事代行サービスの起業家というと、「女性が活躍する領域」という印象がありますが、カジーは30代の男性3人で創業した異色の会社です。創業の原点に、ご自身の子育て経験があるそうですね。
加茂氏(以下、加茂):はい。もともと「世の中のためになる仕事を始めたい」と考えていましたが、事業プランを練る際、妻の妊娠を機に家事代行サービスを使ってみた経験が大きかったのです。
当時、僕は大手監査法人に勤めていて、ほぼ毎日深夜にタクシーで帰るような生活でした。社会保険労務士の妻も忙しく働いていました。
妻は家事もしっかりこなそうとする頑張り屋ですが、妊娠で体調が不安定になると、家事を回すのが大変になって、初めてプロに頼むことにしました。家事が苦手な僕は、「僕が週末を潰してやるよりもずっときれいになるし、効率もいい。しかも、たった2時間でこんなに家を整えてくれるなんて!」と感動しました。
会計士という職業柄、「1時間当たりの成果」には敏感で、余計にその価値を実感できたのでしょうね。
加茂:それもあったかもしれません。
加えて、家事が不得手な男性は、いざ家事をやろうとすると、張り切りすぎてカラ回りすることが多い。僕も、いきなりバーニャカウダを作ろうとして、妻に眉をひそめられるようなことばかりでした(笑)。
とにかく多忙な共働き世帯に、家事代行サービスはピッタリだと納得しましたし、結婚から5年ほど経って、待望の第一子の誕生を控えていたので、「子育てが始まったら、できるだけ子どもとの時間を長く取りたい。これからも活用したい」と感じていました。
一方で、料金の高さや実際にサービスを受けるまでの段取りの煩雑さなどがネックだとも感じていました。
仕事をしながら通っていたグロービス経営大学院の同期3人でビジネスプランを練るディスカッションをしていた時、たまたま3人とも子育て期で、家事代行サービスを利用したことがあったんです。そして、同じようにその問題を解決したいと思っていたことが分かったのです。
意気投合して、ちょうど娘が産まれた年にカジーを創業しました。
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