「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。

 連載12回目に登場するのは、ノバルティスファーマ社長の綱場一成氏。次男の誕生を機に、2018年2月、2週間の育児休業を取得した。売上高2500億円の大企業のトップが育休を取得した背景には、どんな狙いがあったのか。そして普段はどのような子育てを実践しているのか、話を聞いた。今回はその前編。

綱場一成(つなば・かずなり)、ノバルティスファーマ社長。
1971年広島県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業後、米デューク大学大学院にてMBA(経営学修士号)取得。総合商社勤務を経て、米イーライリリーでセールス、マーケティングに従事。同社日本法人営業所長、プロダクトマネジャーなど歴任し、2009年同社香港法人社長に就任。同社日本法人糖尿病事業本部長、同社米国本社グローバルマーケティングリーダー、オーストラリア・ニュージーランド法人社長を経て、2017年4月から現職。都内在住。取材時は47歳。外資系企業に勤める妻と、2歳の長男、0歳4カ月の次男の4人家族。(取材日/2018年7月、インタビュー撮影/鈴木愛子、ほかも同じ)

綱場さんは次男の誕生を機に、2018年2月、2週間の育児休業を取得しました。売上高2500億円の大企業のトップが育休を取ったというニュースに、背中を押された男性も多かったのではないでしょうか。

綱場氏(以下、綱場):2017年11月、弊社は「イクボス企業同盟」に加盟しました。その時に、育休の取得を宣言したのですが、思ったよりも問題なく受け入れてもらえました。
 私の場合、妻が帝王切開出産をすることが決まっていて、夫婦ともに両親が遠方に住んでいて頼れない状況でした。出産前後の家事や長男の世話、入院中の妻のサポートをする役割は、自然と私が引き受けることになります。

 ですから、「働き方改革の一環としてトップ自ら育休を」というような手本を示す狙いよりも、純粋に育休を取得しなければならない事情があったのです。

 男性の育休取得というと、これまでは働き方の融通が利きやすいベンチャー企業の経営者やその社員の方々が主役だったかもしれません。

 けれど、これからはもっと大きな企業や、歴史のある堅い業界でも、経営層の育休取得が当たり前になれば、日本の働き方は大きく進歩するでしょうね。

有無を言わさず必要だから育休を取った。これは女性と同じ感覚ですね。奥さまは、どのような働き方をされているのでしょうか。

綱場:妻は他社の外資系企業でフルタイムで働いています。彼女は彼女で自分のキャリアを大切に築いています。

 フェイスブックCOO(最高執役責任者)のシェリル・サンドバーグ氏が『リーン・イン』(日本経済新聞出版社)で語っていた、「女性はハシゴではなくジャングルジム型で、様々なアプローチで高みを目指していっていい」という考え方に共感しているようで、私の海外駐在期間もキャリアを途切れさせることなく仕事をしてきました。

 彼女の勤務先の会社が女性登用に非常に積極的で、パートナーの赴任先でも新しい役職を見付ける体制が整っているんです。これは見習うべきですし、当社もこういったサポートに力を入れていきたいですね。

 私も社長業で月に1回は海外出張があり、忙しくしています。同じように妻も日々忙しくしていますから、夫婦で連携・協力することがわが家の子育てには不可欠です。

 そうは言っても、そんなに力を入れて頑張っているわけではないんですけれどね。