同じようなバックグラウンドばかりの組織は弱い

お父さんの仕事については、理解しているのでしょうか。

伊佐山:分かっていると思います。普段から仕事と生活を分けすぎずに、子どもたちにもよく話をしているので。「これってどう思う」と意見を聞くことも多い。

 小さい頃は、一緒に遊ぶことで時間を共有できますが、大きくなると、段々とそれも難しくなっていきます。子どもたちが成長しても、親子の関係を緊密に保つためには、自分の仕事に巻き込むのが手っ取り早い。じっくりと宿題を見ることも、普段はなかなかできません。

 ですから、無理なく自然に仕事と子育てを融合させている感覚ですね。

 子どもたちにとっても、僕がなぜ夜遅くまで仕事をしているのか、胃に穴の開くような思いも多いベンチャーの仕事を選んだのか、何となく理解することで、「パパがこういうふうに働いているから旅行ができるんだ」と想像するきっかけになると思うんです。

 それは何も、親に感謝してほしいという意味ではありません。仕事と収入、暮らしの関係を結び付けて考えて、自分の将来の選択に生かしてほしいのです。

 娘は運良くスタンフォード大学に進みましたが、ほかの3人は全く別々の道でいい。むしろその方が、伊佐山家はずっと面白くなると期待しています。

 変化が速く、創造性がより大切になる時代には、いろんな立場から、いろんな風景を見ているメンバーが集まった組織の方が、ユニークな価値を生み出せます。

 これからは日本でも「あの企業は東大卒ばかり」ではなく、東大卒もいれば中卒も専門学校卒もいるというように、多様なバックグラウンドの人材を集める組織の方が、強みを発揮できるのではないでしょうか。

経営と子育ての共通点はありますか。

伊佐山:信頼関係がすべてのベースにあるという点は全く同じです。僕の経営するWiLという会社は、ファミリー経営だと内外に伝えています。

 家族のように互いに安心して信頼し合える仲間であろう、と。他人の宿題を助ける日本的な良さと、個人の能力を発揮しやすいアメリカ的な良さをかけ合わせた、ハイブリッドな組織を目指しています。

 使命に向かって一緒に進むけれど、「失敗しても大丈夫。仲間がリカバリーしてくれる」という安心感があれば、新しいことに挑戦できる組織になるはずです。

 まさに子育てと同じ価値観で、会社を経営しています。

伊佐山さんにとって、子育てとは。

伊佐山:やはり、安心して挑戦できる環境づくりですね。

 経営も人がすべてであり、一人ひとりと信頼関係を結んで、適材適所を見極めて、挑戦を応援する。これに尽きます。

 僕の中では、子育てと仕事は同じ人生の一部であって、どちらかが優位にあるという感覚はありません。両者は不可分な存在で、一体です。

 仕事と子育てを分けて考えることさえ無意味だと思っています。

 日本ではいまだに「職場で家族のことを話すのはタブー」といった雰囲気があるようですが、世界の感覚とはかけ離れています。

 経営者が子育てについて堂々と語り、互いの人生の一部を見せ合う場が増えていけば、日本の風景も少しずつ変わっていくでしょうね。

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