自分がやりたいことを見付けるために、挑戦と失敗を繰り返しなさいということですね。勉強以外でも、いろんなことを体験させているのでしょうか。

伊佐山:スポーツは必須です。僕も妻もスポーツを通して育っていて、本から吸収できない知恵がたくさんつまっていると、経験上分かっているんです。

 一番は身体的な痛みを知れること。ぶつかったり、転んだりして、ケガをして血が出る。しんどくて、辛い。スポーツに付き物の肉体的な痛みを経験して、他人の痛みも想像できるようになる。その体の感覚を吸収できないまま育つと、他人をいじめることが平気になってしまう。チーム競技で勝ちを目指す経験も、勉強では得られにくい、スポーツならではの学びですね。

 ですから、わが家で生まれた子たちは、もれなくスポーツをやらされます。

スポーツは戦略的にサッカーとゴルフ

具体的にどんなスポーツをしていますか。

伊佐山:これも、いろいろ試して落ち着いた結果ですが、今は主にサッカーとゴルフです。この2つはそれぞれ特性が異なります。

 サッカーはルールがシンプルで、ボールさえあればどこでも始められる気軽さがある。また長時間走ることで持久力が、チームで戦略を練ることで協調性が養われます。

 サッカーチームに入ると、ラテン系や欧州系の友達ができやすいのも大きなメリットです。アメリカで暮らしていると、見た目が近いから、アジア系の友達は割とすぐにできますが、サッカーを通じて多様性ある友達がさらに増えていきます。

 ゴルフは年齢構成の幅の広いスポーツです。6歳の子どもから80歳のシニアまで一緒になって楽しめるスポーツは、ほかにないのではないでしょうか。僕たち夫婦が年を重ねても家族で楽しめるスポーツになるという期待もあります。

 ただゴルフの練習は単調で、決して面白くはありません。ですから忍耐力を養うスポーツでもある。天候に左右されやすく、環境適応力も問われる。試合の勝敗には運の力も大きく、強い精神力が問われる。こういった部分も個人としての成長につながるだろうと思っています。

選ぶスポーツにも理由があるのですね。

伊佐山:まぁ、あと付けで理屈を考えているだけですが(笑)、少なくとも身体を鍛える時間をおろそかにしたくないという気持ちは強いですね。

 これからはAI(人工知能)やロボットの発達によって、人が手足を動かす手間はどんどん省かれていきます。

 放っておくと、人間の身体機能は低下するばかりだと容易に想像できます。「ラクになる」ということは、ほかの何かが鈍っているということです。鍛えるべき部分は意識をしないと、人間に備わった機能が退化してしまうと危惧しています。

日本ではプログラミング教育が大ブームになっています。

伊佐山:僕からすると「強制してまでやらせることはない」という感じです。

 もちろん、それが好きな子はどんどんやっていい。けれど、みんな一律で義務教育化するのは無意味です。

 事実、シリコンバレーではプログラミングが義務教育化されていません。うちの子は全員、ITリテラシーが高いけれど、プログラミングに興味を持つかはその子次第。面白いと思ったり必要だと感じたら、学ぼうとする。英語を義務教育化しても、本気で本人が学ぼうとしなければ身につかないのと同じです。

 長女は高校まで、プログラミングに一切触れていませんでした。けれど大学で興味を持ってから勉強して、十分に間に合っています。自分で学びたいと思うから早く吸収できるのでしょう。つくづく、親の役割は子どもから自然に湧き出る興味関心を応援することしかないと思いますね。

 もう一つ、うちの子育ての方針で大事にしているのが、「あえて、少し難しいことをやらせる」ということです。