リビングに集まって、みんなで勉強する
お子さんたちの普段の勉強には、どんなこだわりがありますか。
伊佐山:うちの学習スタイルは「リビング集合型」です。子どもたちにはそれぞれ個室を与えていますが、宿題や自習は、夕食後にリビングで一緒にやるのが習慣になっています。
その時、僕も一緒に本を読んだり、仕事の資料を読んだりする。要は「家族みんなで一緒に勉強する時間」をつくって習慣にしているんです。
この習慣化が何よりも大切で、子どもは「勉強しなさい」と強制されても、やる気は起きません。歯磨きや入浴と同じように、「やるのが当たり前」になれば勝ちです。うちでは夕食後に1時間の自由時間、その後、勉強をするのが家族の習慣になっています。
僕は夕方から夜遅くまで日本とのやりとりがあるので、仕事を進めながらになりますが、子どもたちと一緒にリビングで過ごすようにしています。

勉強することが生活の一部になっている。しかも親も一緒に勉強するのですね。
伊佐山:試験前だけ集中して勉強するのは、本来の学習とは違うと思います。
大切なのは、いつでも学びたいことを学ぶようにすることです。何か気になることがあれば、すぐにウェブで調べて議論をする。そうした知的好奇心を満たす面白さを体得しているか素通りしてきたかでは、そのあとの行動が大きく変わるのではないかと思います。「知りたい」と感じた時にすぐに学ぶ習慣を、子どもたちには身につけさせたいですね。
僕も時間がある週末には、「リビング講義」をすることがあります。
「お金の儲け方にはいくつかのパターンがある」と話して、「どう思う?」と意見を聞いたりしています。いつでも取り出せる黒板をリビングに置いていて、図解しながら話しているんです。
「勉強は一人でするもの」というルールも、わが家にはありません。これからはチームで協業する時代ですから、課題で苦手なところはお姉ちゃんに聞いてもいいし、リサーチとまとめをそれぞれが分担したっていい。社会に出た時、たった一人で完遂できる仕事はありません。ですから手分けをすることを、勉強でも勧めています。
伸びる組織や人材をよく知る伊佐山さんならではの、人間力にこだわった家庭教育を実践されているのですね。逆に、お子さんたちから伊佐山さんが学ぶこともあるのでしょうか。
伊佐山:僕も知らないことはたくさんあるので、子どもたちから教わることは多いです。「こういうサービスあったら便利だと思う?」と聞いて、「いいと思う」という反応が返ったら、「子どももいいと思うのだから将来性はあるな」と感覚をつかんだりしています。
親が子どもに一方的に教えるより、互いに学び合う関係にしていきたいですね。
僕は、仕事の話もよくするので、子どもたちも働くことには自然と興味を持っているようです。日本だと、学校教育と社会に出て働くことが分断されていますが、本来は学ぶことと働くことは不可分であるべきです。社会を良くするために学んでいるわけですから。
お子さんたちはほぼアメリカで育っていますが、日本語の習得は。
伊佐山:自分のルーツをいつでも検証できるよう、必要最小限の日本語を教えるように意識しています。家庭で「漢字テスト」をやっていて、その結果によってゲームの制限時間を決めるなど、身につきやすい工夫をしています。
将来は、日本の美しい文化や文学作品を楽しんでもらえたらいいなと思っています。
(後編に続く)
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