「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。
連載9回目に登場するのは、一般家庭向けに資産運用コンサルティングを手掛ける「ガイア」を経営する中桐啓貴社長。金融業界のプロは、わが子にどのような教育を施しているのだろうか、話を聞いた。今回はその後編。
家庭内での教育についてうかがいたいと思いますが、やはり気になるのは、金融のプロである中桐社長が、わが子にどんな金銭教育の機会を与えているのかということです。
中桐氏(以下、中桐):事業で実践していることそのものですが、長期分散投資のメリットは社会に出る前から体験させていきたいと思っています。銀行口座は3人それぞれに持たせていますが、小学4年生の長女には、今年から証券口座を開かせて、投資信託を始めさせたいですね。
日本では投資というと、「個別株を売買して目先の配当や優待に気を取られて……」という短期的な投資のイメージが根強い。けれどアメリカでは将来にわたって、自分の資産を増やす手立てとして、投資信託を数十年単位で運用して資産を形成するのが当たり前です。
米キャピタルグループの運用例で、約100万円が40年間で約4000万円になったという例があるとセミナーで話すと、驚く人が多い。
昔なら、日本は預けていれば安心だったかもしれませんが、今では社会保障が国任せにできない時代ですし、娘たちが成人する頃にはますますシビアな問題になっているはずです。だからこそ、「時間を味方につけてコツコツと」という投資スタイルを覚えさせたい。
例えば長女は、10歳になる今年から投資信託の運用を始めて、5年後の高校1年生になった時に、「ほら、こんなに殖えたよね。10歳の時に始めたんだったよね」と、実際の数字を見せることができたら、金融の仕組みも自然と伝えやすいはずです。

下のお子さんに、今から教えていることはありますか。
中桐:投資信託デビューはまだ先でいいかもしれませんが、(職業体験型アミューズメントパークの)「キッザニア」は大好きで時々行っています。興味がある職業体験をして、やった分だけ施設内流通通貨「キッゾ」をもらえて、銀行に預けると利息が付く。大まかなお金の流れの仕組みを体験できるのはいいですね。
お小遣いのルールはいかがですか。
中桐:長女は1000円、次女は500円を、月初に渡して、その中で好きなものを買うようにしています。「ディズニーランドに行ったら楽しくてつい使いすぎてお金がなくなった」といった失敗も含めて、小さい頃から金銭感覚を身につけさせていきたいですね。
子育てを通じて、お子さんに与えたいと思うものは。
中桐:いろんなものに触れる経験です。遊びや習い事、旅行や芸術に触れる時間を通じて、豊かな感性を磨けたらいいと思っています。劇団四季の公演などによく連れて行っています。『キャッツ』より『ライオンキング』が子どもたちには好評でした。
上の子2人を一緒に連れて行けば、妻もゆっくりと下の子を見られます。ミュージカル鑑賞は、僕が子どもの頃、親に連れて行ってもらっていたので、無理なく親しめるんです。
僕は、父親の仕事の関係で、海外で暮らした経験が何回かあります。その時に現地の劇場に連れて行ってもらって楽しかった記憶がある。やはり、小さい頃によく触れたものは大人になってもずっと親しめるんでしょうね。
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