妻の言葉を、深掘りして「聞く」

妻と娘が結託して父親を批判するとなると、父親は居心地が悪くなって、家庭に関わりづらくなりますよね。

中桐:逆も然りです。夫婦の会話では、妻の話をよく聞くことに徹し、反論したり意見したりすることは一切しないようにしています。それが一番大切なことだと思っていて、夫婦の信頼関係を安定させ、子どもたちが安心できる居場所になると思っています。

 平日は遅いのでなかなか時間が取れないですが、土曜の夕食後は、2人でゆっくりと話す時間をつくっていて、子どもたちもそれを分かっているのか、こちらに声をかけずに、子どもたち同士で仲良く遊んでいます。

反論や意見をせず、「聞く」に徹するとは。

中桐:妻が発した言葉を、ひたすら深掘りしています。特に便利な受け答えワードは、「とおっしゃいますと?」(笑)。例えば、妻から「今日こんなことあってさ。イライラしちゃったんだよね」と言われた時、夫が「そんなこともあるよ」と軽く流して終わりにしたり、「上司に相談すべきだよ」と正論で助言したりすることで、なぜか妻のストレスを倍増させるということはよくあるのではないでしょうか。

 妻側からすると、解決法を知りたいのではなく、今抱えている思いをじっくりと聞いてほしいはずです。だから、聞くに徹する。相手の言葉を聞き返したり、相槌を打ったりしながら、思いの丈を好きなだけ話してもらう。すると相手はスッキリとした表情に変わってくる。負の空気が一掃され、家庭円満につながります。子どもの前で夫婦げんかをしたことは、これまでで5回もないと思います。

そのスキルはどうやって磨いたのでしょうか。

中桐:今の仕事ですね。資産運用の相談を受ける時、一番大事にしてきたことが、相談相手であるお客様の「こんなことをしてみたい」「将来はこういう夢をかなえたい」という願いを掘り起こし、それを実現するための計画を提案することです。

 この「ニードセールス」の精度を高めるために、社員には半年以上かけてトレーニングをしていますし、自然と“対話の技術”への意識が高まってきたのだと思います。

 父親の場合、娘との関係は思春期以降、難しくなると言われています。けれど、「深掘りして聞く」というコミュニケーションの体験が積み重なっていたら、根底の信頼関係は築けるんじゃないかなと思っています。

 例えば「これを習ってみたい」と言われた時、すぐに「いいよ」とか「ダメ」で終わらせるのではなく、「なぜそう思ったの」と言えるかどうか。この質問で子どもの気持ちを表出させて、理解に近づくことはできる。これからは娘たちの会話にも「ニードセールス」の技術を生かしたいなと思っているところです。