子どもにとっての「安全基地」でありたい

金銭教育を入り口に、仕事や人生における幸せとは何かについても考えるきっかけになっていく。

中野:これから技術が発達して、機械が仕事の中に入り込んでいくほどに、「自分の仕事がどこの誰の幸せにつながっているか」ということが見えづらくなっていくはずです。

 例えば、ここにあるペットボトル一つにとっても、数え切れない人が関わって生まれている。それを想像するのがますます難しくなっていく。仕事柄、学生さんにそんな話をする機会も多いのですが、結構、想像できていない子は多い。自分がやった小さなことが、どんなつながりをもって人に影響するのか。想像する癖を子どもに身につけさせることが、親の役目かなと思います。

 後は何かあった時に、いつでも帰ってこられる「安全基地」を用意してあげる。安全基地があれば、思い切ったチャレンジができる。これは脳科学者の茂木健一郎さんがおっしゃっていて深く共感できたことです。

 実際、ビジネスをやっていると、「どこまで人を信じて思い切れるか」という決断を迫られる場面は少なくありません。最悪、裏切られる可能性もゼロではない。それでも飛び込めるかどうか。

 疑う気持ちは相手にも伝わるので、心から信じようとしないといけない。傷つく覚悟を持って勝負に出るには、“絶対的な安心”が必要なんです。そんな場所が自分にはあるんだ、という感覚を持たせられる関わり方をしていきたいと思います。

親が楽しんでいる姿をきちんと見せたい

お子さんにとっての安全基地になりたい、と。

中野:加えて、親が自分の人生をとことん楽しんでいる姿勢を見せることが大事じゃないかと思っています。やりたいことを我慢せず、親が楽しそうにしていれば、子どもものびのびと自分の人生を生きられる。どんな状況であっても、「自分で選んだ道だから」と楽しむ横顔を見せ続けたいですね。

 最悪なのは、自分たちの不幸を子どものせいにすること。子どもが自然と「大人って楽しそうやな。早く大人になりたいな」と思える希望の存在でありたい。だから、いつでも笑って仕事をしていたいんですよね。

将来どんな仕事に就くべきかと助言を求められたら、どう答えますか。

中野:もし聞かれたら、という前提になりますが、そもそも「職種」という考え方が古い価値観になるかもしれません。僕は、仕事は大きく「価値をつくる人」「価値を伝える人」「組織をサポートする人」と、3つの種類に分けられると理解しています。

 例えば、エンジニアは価値をつくる人で、営業はそれを伝える人、社長や人事といった管理系はサポートする人です。この3つは、時に複合的でもあるので、「今、自分が就こうとしている仕事はどのタイプに近いのか」と客観的に理解する視点を持ったほうがいい、と教えたいと思います。

 さらに、仕事を区分するもう一つの軸として、「ルールをつくる人」と「つくられたルールを守る人」という分け方もあります。エンジニアの中にもルールチェンジをする人と、決められたルールに沿って淡々とつくる人の2種類がいる。

 これは圧倒的に前者を目指すことを薦めたいですね。

お子さんが自分の適性を見極めるために、心がけたいことはありますか。

中野:「自分を知る」、自己認知は一番難しいことだと思っています。

 それには、とにかく人にたくさん会うしかない。いろいろな人に出会って、いろいろな見られ方をすることで、自分は何者かという形が見えてくる。たくさんの人に接することで、自分らしさや強みが明確になるのは、経営でも子育てでも一緒だなと感じています。

経営と子育ては「ほとんど一緒」

「家庭外のたくさんの人に交わって育ってほしい」というのは、そんな意図があってのことなんですね。経営と子育てに、共通点は多いと思いますか。

中野:ほとんど一緒だなと感じています。経営者としても親としても、僕はそんなに完璧にできているつもりはない。ただ両方とも、相手が成長しやすい環境づくりに徹することに尽きます。全部は用意できないけれど、できるだけのことはやる。でも、「親だから」「社長だから」と義務感だけでやると限界があるので、自分自身が楽しんでいることが大切かなと思ってます。

最後に、中野さんにとって「子育て」とは。

中野:難しい質問ですね。というのは、僕にとって、子どもは「育てる」という感覚があまりないんです。もともと持っているポテンシャルで勝手に成長する、というイメージで。

 親の所有物でもなければ、コントロールできる対象でもないという考えがもともとあります。だから、「子育て」という言葉も、実はしっくりこないんです。

 子どもと向き合う上で一番大切にしていることを表現するとしたら、「好奇心育て」です。「どうしてそう思った?」「なんでやと思う?」と子どもたちに問いかけながら、どんな時代であっても人生を楽しむ原動力になる好奇心を刺激し、開放していきたいと思います。

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