8カ月の娘と、対等な人間として関わっていく

お子さんがどういうふうに育ってほしいなど、夫婦で話している方針はありますか。

森山:経営者の娘ということで、いろんな見られ方をすると思うので、周りの期待やプレッシャーを感じず、自由に育ってほしいと思っています。特に親である僕たちが過剰な期待を感じさせてはいけないので、名付けも気をつけました。

 あまりスケールの大きな名前にしすぎないように考えて、「美しい人」という意味のある「英」という字をあてて「はな」と名付けました。今はまだ乳児期なので、とにかく愛情を注げるだけ注ごうという方針です。

 一つ、ユニークかもしれないのは、僕たちが娘を呼ぶ時に「英ちゃん」ではなく「英さん」と呼んでいることです。赤ちゃんであっても一人の人間として尊重し、対等な存在として関わっていきたいので、「さん」づけで呼ぶようにしています。いわゆる赤ちゃん言葉も使いません。

子どもを未熟な存在ではなく、対等に関わるべき存在として接している、と。

森山:そうです。これも経営のあり方と重なると思うのですが、要は我が子に対する接し方も、社員に対する接し方も、共通して根底にあるのは同じ人間観。人間をどう見ているか。

 例えば、人が自ら成長することを信じられない人は、育児も経営も、厳しく管理するスタイルになるのではないでしょうか。あるいは子どもに対して甘く、社員に対して厳しい人は、内と外を区別するという精神の表れであり、いざという時に身内だけ守る可能性が高い。人間観が色濃く表れるという意味で、子育てと経営は不可分だと思います。

 一方で、人間は完璧ではないので、親だけで育児をするのは無理なんです。周囲の力を借りて、一緒に育てないといけない。これも会社における人材の成長と全く同じです。上司と部下の1対1の関係性だけで育つことは絶対になくて、周りの同僚や社外のパートナー、そしてお客さんにも育てられながら、人は成長していく。

 ところが育児となると、まだまだ家庭の中だけで閉じています。本当は親以外の様々な人に関わって成長していくのが自然で、会社という場所もそういう機能を果たせたらいい。子育てに貢献する機能拡張として、子連れ出勤を歓迎しているという意味合いもあるんです。

売上高の5%程度を専属シッターや昼食提供のコストに

もともと森山さんは、「社員が安心して健康的に働ける環境づくり」を重要課題と位置付けて、売上高の5%程度を専属シッターや昼食提供のコストに当てているそうですね。

森山:はい。僕は会社を経営する上で、「不自然なことはしたくない」と思っているんです。体にいいものを食べて健康を維持したり、みんなで仲間の子どもを守ったり、地球の生物として自然なことを実践していきたいと思っています。迷った時にはいつも自然の摂理に立ち返るようにしています。

より自然な子育てのために会社としても投資をする。その結果、事業の成長にもつながると考えますか。

森山:事業戦略上、不可欠です。僕たち一人ひとりがライフイベントに深く関わる探究をするほど、会社としても提供できる価値は高まります。まさにキャッシュになり、売れるものになる。

 僕自身が育児を経験しながら一番学ばせてもらっているのは、人の育成に立ち会う姿勢です。じっくりと腰を据えて観察することで、「こんなことまでできるようになったのか」と驚くべき成長を、娘は見せてくれます。

 会社における人材育成も同じで、長い時間をかけて膝を付き合わせて見つめていくことで、受け取れる成長はたくさんあるな、と。経営者としても、娘からいろいろと教わることは多いですね。

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