「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。
連載6回目に登場するのは、完全オーダーメイドのウェディングプロデュース事業などを手掛ける「CRAZY」の森山和彦社長。会社にベビーシッターを配置するなど、子どもを育てながら働きやすい労働環境をつくる。初めての子育てを通して、「経営も育児も共通点は多い」と語る。今回はその後編。

前編(「育児の“社長”は妻。僕は優秀なフォロワー」)で森山さんは、お子さんが生まれた直後、1カ月の育児休業を取得したとおっしゃいました。会社の代表者が妻の出産に深く関わり、育児休業を取ることや、子連れ出勤をよしとすることに対して、会社の皆さんはスムーズに受け止めたのでしょうか。
森山氏(以下、森山):基本的に、自分たちが働きやすいスタイルを更新していこうという方向性なので、うまくいっている方だと思います。
そもそも会社というものは、もともと決まった枠組みやルールがあるわけではなくて、そこに集まる人がつくっていくもののはずです。お金と一緒で、「ある」とみんなが信じるから実体が生まれる。いわば共同幻想のようなものなんです。ですから、その時その時で、最適な形をみんなで考えていけばいい。
その形づくりをする過程で一番大事なのは、「どんなストーリーで語るか」という意味づけです。「子育てって大変なもので、育児中の人は戦力にならない。周りもフォローが負荷になるよね」というストーリーで語るのか、「子育ては人間成長の素晴らしいきっかけだよね。子育てをサポートする組織をつくれたら、個人も会社もステップアップできるよね」というストーリーにするのか。
経営者がそのシナリオ書きを怠らず、ストーリーをしっかりと行き渡らせることができていれば、新しい制度やルールも自然に受け入れられるものになるはずです。
もちろん、多少の不具合は起きますよ。うちでも子連れ出勤を始めた当初は、深い議論をしている最中に、子どもがワーと泣き出して、「おっと……」という雰囲気になったことは何度もありました。でも、それも数カ月のうちになじんでいきました。今では、もうBGM状態で、誰も気にしていません(笑)。
シッター制度も、最初はスケジュール調整を管理部門が代行していましたが、突発的な変更に対応するには、当人同士で直接交渉する方がうまくいくと分かって、運用方法を変更しました。試行錯誤して、より良い方法を見つければいい、という前提で進めてきました。

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