子育ての“社長”は妻。“優秀なフォロワー”になろう

育休を経て、夫婦の関係に変化や発展はありましたか。

森山:逆の視点でリーダーシップを学べました。会社経営では僕が社長ですが、子育ての社長は妻。特に乳児期は、どうしても母親が決定権を持つ場面が多いですからね。

 僕は子育てでは、妻というリーダーに対して“優秀なフォロワー”になろうと決めたんです。育児となるとつい男性は受身的な姿勢になって、「何かあれば手伝うよ」「僕ができることは協力するよ」というレベルにとどまりがちですが、それでは足りない。

 仕事に置き換えると簡単で、「何かあったら言ってください」「指示してください」と待ちの姿勢の社員は、僕は一緒に働きづらい。「自分でやるべきことを考えて、自分の目的に沿ってやっていってくださいよ」と言いたくなる。

 子育ても、「何かあったら手伝うよ」と待っている場合じゃないんです。「手伝うじゃないでしょ。あなたが子育てするんでしょう」と反論されるに決まっています。育児を“自分事”にして、「自分が子を育て、妻を守るのだ」と考えたら、自ずとやるべきことは見つかるし、一生懸命働くわけです。

 料理も頑張りました。カレーをスパイスから煮込んでつくったり、サッパリとしたアジアンヌードルをつくったりして、妻も「おいしい」と食べてくれました。たまにサウナに行ってリフレッシュしつつ、精一杯やりました。

 「料理ができない」と、やる前から自分の可能性を狭める男性も多いけれど、決してそんなことはなくて、やればできる。「クックパッド」とか、今は活用しやすいツールも豊富にありますから。

 育休中は、広島のスーパー「フジグラン」で食材の買い物をするのが日課になっていたのですが、「どうしてこの地域にはこれが売っていて、あれは売っていないんだろう」と経営者目線で楽しんでいました。

育休でたくさんのビジネスのヒントを得た

この期間、ビジネスでもヒントも得たのですね。

森山:たくさんのヒントを得ましたね。妊娠期から産前産後、育児まで、僕たちが提供できるサービスはまだまだあると、発見の毎日でした。実際にやってみようと準備を始めているプランも既にあります。

 僕たちの会社は、人生にまつわる素晴らしい時間に焦点を絞って提供していきたいと考えているので、今回の経験からインプットした気づきや学びは膨大にありました。

特に印象的だった体験は。

森山:出産直後のカンガルーケア(分娩後すぐに、母親の直肌の胸の上で新生児を抱き、スキンシップを行うケアのこと)を、父親である僕も経験したことです。父親がカンガルーケアをするのはとても珍しいようで、妻が出産した助産院でも初めてだと言われました。

 妻の後に、「僕もいいですか」とお願いして上半身裸になって、30分ほど生まれたばかりの娘と触れ合う時間をつくりました。なぜカンガルーケアを自分もしようと思ったかというと、父親の存在と父親からの愛情をしっかりと伝えたかったからです。

 「まだ目も見えていない赤ん坊に何が分かるのか」と考える人もいるかもしれませんが、僕は確実に伝わるはずと思っていました。例えば、目を閉じた状態で親しい人から体を触れられても、それは誰の手なのか、その人の気持ちも含めて感じることができますよね。

 それはきっと、お腹の中にいる時から同じはず。ですから、娘が生まれる前から毎日話しかけていました。

 僕なりに勉強した結果、赤ちゃんは産まれて数週間は胎内にいた時と同じ感覚が続くということだったので、「お腹の中にいた時に話しかけていたお父さんがここにいるよ」と伝わるように、話しかけ、抱くようにしていました。

 すると、やっぱり安心するのか、すぐに泣き止むんですよね。「母親でないと赤ちゃんは安心しない」という論調もありますが、そんなことはないと思います。娘は今でも「お父さんでも安心」という笑顔で僕と過ごしてくれます。

(後編に続く)