なぜ、電車の中で泣く子どもに腹を立てるのか

育児と仕事の重要度に違いはなく、一直線上にあるということですね。

森山:育児も仕事も「誰かの幸せのため」という貢献活動なので全く同じです。

そういった考え方は、ご自身にお子さんが生まれたから持てたのでしょうか。

森山:その前からです。世界中を旅して地球全体の仕組みや課題を勉強する中で、「自分以外の視点でのモノの見方をたくさん覚えていく」ことの重要性を知りました。他者目線になれることは、幸せに生きるための条件であり、自分中心で生きると幸せを感じにくくなるのだ、と。

 例えば、電車の中で泣く子どもに対して腹を立てるのはとても貧しい心だと思います。親や子どもの気持ちになって、あるいは時間軸を変えて数十年前の自分の姿を想像してみれば、自ずと怒りの感情はわかないはずなので。他者目線と時間軸を変える考え方は、経営でも常に意識しています。

ご自身も1カ月の育児休業を取得されたとか。

森山:はい。妻は出産のスタイルにもこだわって、広島にある助産院で産むことを選びました。ウィークリーマンションを借りて、産前から僕も広島に入り、産前産後の妻の衣食住の世話や、授乳以外の育児、出産も立会いました。

 産後1カ月、母体はできるだけ安静にした方がいいと勉強したので、僕が妻の代わりに動ける体制をつくったんです。リモートワークをしながらの休業でしたが、買い出しや料理、洗濯、掃除と、育児と家事だけでこんなに忙しいのだと実感する学びの日々でした。

実際に経験した子育ては、想像を超えていた

想像したのと実際に体験するのとでは、違いがありましたか。

森山:全く違いましたし、すべてが想像を超えていました。ジェットコースターも乗る前に「こういうものかな」と想像しても、実際の乗った時のスリルは全く異次元じゃないですか。

 以前、観光名所の南米・ボリビアにあるウユニ湖を見に行ったとき、ガイドブックには美しい湖面しか載っていませんでした。けれど実際に行くと、そこにたどり着くまでバスに10時間乗り、しかもずっと砂嵐状態だったんです(笑)。それが旅の真実ですよね。同じような“リアル体験のインパクト”を育児でも毎日実感しています。

 同時に気をつけたいと思っているのは、ひと口に育児と言っても、その内実は十人十色で、大変さのレベルも、その人の家族構成や人生経験によって違うということ。

 「うちはこのくらい大変で、こういうふうに乗り切っている」という論理を他人に押し付けることはできないし、それぞれのシチュエーションを想像する力を持ちたいと思っています。

 そういう意味では、僕が結婚10年目の30代で父親になったことは、タイミングとしては良かったと思います。もっと若かったら、きっと自分自身を成長させることに精一杯で、今ほど育児に向き合えなかったかもしれません。