「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、プロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。 連載3回目に登場するのは、建築デザイン事務所noizを主宰する豊田啓介氏。台湾出身の妻と共に、2人の子どもを育てる。シッターさんなど、外部リソースをうまく活用した豊田氏の育児スタイルから、私たちが学ぶものは多いはずだ。豊田氏の育児論を聞いた。今回はその後編。

豊田さんはお話の中で、家事・育児のアウトソースを積極的に勧めていらっしゃいました(「夫婦はもっと、家事・育児のアウトソースを」)。確かに、外部の手を活用することは、女性ばかりでなく、男性にとってもメリットが大きいようです。子どもを持つことに積極的になれない男性の心情として、「自分の時間がなくなるのがイヤ」という不安もあるようですが、そういった不安の解決策にもなりそうですね。シッターさんを活用するライフスタイルは、建築のアイデアにも影響していますか。
豊田氏(以下、豊田):発想というか、人の暮らしについて想像できる範囲は広がりました。
例えば、パートナーの故郷である台湾や香港の暮らしに接していると、これらの国の上流アパートメントの設計は、日本人はできないだろうなと感じるんです。
なぜなら、家政婦さんが住み込む生活を前提として、どのベッドルームにも専用のバスルームがあって、キッチンスペースは広く、中華料理を作る時の煙を遮断するための設計とか、日本に暮らしていたらイメージできない前提が多々あるんです。
彼らのような上流階級が、旅行やビジネスで日本に長期滞在した時、家政婦も一緒に連れて来れる受け皿はあるのか、と。現状の答えは「ない」です。ホテルは別室になるのでダメですし。
日本人の視点でいくら「訪日外国人を増やしましょう」と叫んでも、彼らのライフスタイルやニーズを正確に読み取らなければ、意味がないのだと気づかされます。いくら民泊を解禁しても、現状の箱では満足されない、ということです。
僕たち建築家が無意識にフィルターをかけて見てしまっていた「公共」や「家族」の姿とは何か。子育てを通して、改めて考えさせられることは多いですね。フィルターを取り払ったら、もっと自由な発想はできるんだろうなぁ、と。例えば「レンタルパパ」とかあってもいいし。
レンタルパパ? それはどういうものでしょう。
豊田:単なる思いつきですけどね。忙しいパパに代わって、全力で子どもと外遊びしてくれるお父さんが週末に派遣されるサービスだって、別にあってもいいわけです。家族のあり方は本当に多様で、グラデーションになっている。既成概念の枠が溶けていけば、建築のあり方も変わっていくと思います。「なんで、ファミリー向けの住宅は3LDKなんだっけ」という投げかけは、もっと僕たちからやっていくべきかもしれない。
Powered by リゾーム?