育児は「夫婦を映す鏡」

「できていない」とおっしゃりながら、しっかり育児に関わっていますね。多忙な入山先生を育児に向かわせている原体験は何でしょう。

入山:育児は「夫婦を映す鏡」だと思っています。うちの場合も、夫婦の成り立ちが関係しているような気がしますね。

 僕が妻の裕実と出会ったのは、三菱総合研究所を退職して、アメリカのピッツバーグ大学経営大学院に留学していた頃のこと。彼女も同じく、日本から留学していた同級生でした。彼女はもともと、みずほ銀行の総合職で、M&A(合併・買収)向け融資などを担当していたのですが、国際開発援助に関わりたい気持ちを捨てきれず、銀行を辞めて渡米していた。

 出会って2年後に彼女は修士を取って、日本の別の援助機関に就職。ベトナムのハノイで1年間働いていました。その間、僕はアメリカで博士課程の学生でした。ハノイの任期を終えた後で、彼女は契約を延長する選択肢があったのに、僕と結婚するためにアメリカに戻ってきてくれた。

 その後、結婚してすぐに彼女は妊娠。僕が33歳、裕実が31歳の時でした。

 ピッツバーグで長男が生まれた後、僕がニューヨーク州立大学の助教授の職を得て、一緒にバッファローへ移りました。当時のバッファローは、“ど”がつくほどの田舎で、開発援助に関われる仕事はなく、彼女はたまにボランティアをする程度。基本的には、主婦業が中心の生活を送っていました。

 バッファローに移った後に長女も授かり、頼れる親類もいない環境の中、とにかく必死で、夫婦で育児をしていた記憶があります。

 子どもが小さい時期ならではの夫婦ゲンカはしょっちゅうでした。互いにストレスで爆発しそうになったことも数知れず。それでも何とかしなくちゃならないと、2人とも学習しながら、価値観をすり合わせていきました。お金もあまりない時代、遠い異国の地で、2人で育児に奮闘した経験は、今の生活の源流になっているのかもしれません。

 2人の性格は正反対。僕は「超」のつくいい加減な性格で、元銀行員の妻からすると「あり得ない」とよく叱られます。大事なのは、こまめに「ありがとう」と言うことでしょうか。なんだかんだ言って日常の家事や育児のほとんどは、妻がやってくれていますから。でも「ありがとう」も何度も言っていると、相手も慣れて喜ばなくなるので難しいところです(笑)。

 つい先日も、彼女から「風呂掃除が雑だ」とダメ出しされたばかりです。だったらと、洗剤を多めにつけて一生懸命シュッシュッとやっていたら、今度は「洗剤、使い過ぎ!」と。「そういうの、家事ハラって言うらしいぞ!」と反論しましたが、全く届いていませんね(笑)。