わが子には、とにかく表情豊かに育ってほしい

入山先生がわが子に与えていきたいと思うものは何ですか。

入山:これからの世界で生き抜くための共通言語を与えてあげたいですね。

 これは、あくまで僕が考えていることですが、世界中の人とコミュニケートできる共通言語、つまりプロトコルをもっているほど、挑戦できるフィールドが広がるし、ビジネスであれば一気にスケールできる可能性が高まると思います。

 現在、世界の共通言語(プロトコル)は4つあると思っていて、1つ目は現時点で世界最大の自然言語の共通語である英語。2つ目は数学。3つ目はプログラミング言語。そして4つ目が、意外に思うかもしれませんが“表情”です。

 嬉しい時には笑う、悲しい時には泣く。感情にひも付いた表情は、人種や文化を問わず、すぐに交換し合える最強のプロトコルだと僕は思っています。人間どころか、犬だって悲しさが表情から伝わります。生物の種さえ越える共通言語の表情の力は、すごいんです。

 だから、うちの子たちには、とにかく表情豊かな人間に育ってほしい。楽しい時にはワハハと笑って、悲しい時にはワーンと泣ける子になってほしい。子どもが泣いている時は、「思い切り泣け」って言っていますね。

 あとは「子どもを自分のコピーだと思うな」と、自分自身に言い聞かせています。同性の息子に対しては特に。

 息子と自分をつい重ねて、「昔のオレみたいに本を読んでないのはどうしてだ」といらだったりします。けれど、彼には、彼の得意分野がある。実際、僕よりも息子の方が、数学的な才能は断然高い。我が子に過去の自分をトレースさせるのではなく、全く別の人格であることを自覚しないといけません。

 それに、僕らの世代が生き抜いてきた時代の環境と、息子たちがこれから生き抜く環境は全然違います。変化のスピードは、これからますます加速するでしょう。だから親世代の成功体験を押し付けることは、参考になるどころか、リスクでしかありません。あるメディアで社会学者の古市憲寿さんが、「親の言うことは聞くな」と言っていましたが、強く同意しますね。

 とにかく、「親の言うことを聞く子どもにだけはなってほしくない」、「自分の価値観で自分のことを決めて欲しい」とだけは、強く思います。

毎週月曜は育児の日

改めて、入山先生の育児の実情について聞かせてください。普段、お子さんとどんな関わり方をなさっていますか。

入山:うちの場合、妻は開発援助関係の機関で働いていて、たまにアフリカに1週間出張することもあるほど多忙です。ですから子育ては、夫婦で協力しています。

 とはいえ、僕も忙しくて、偉そうにちゃんと育児に携わっているとはとても言えません。そもそもこの連載の第1回の取材対象が僕でいいのか、という気すらします。けれど、比較的時間の調整が自由にできる学者という職業を生かして、毎週月曜日、まずこの日だけは1日中家にいて、「育児にコミットする」ようには決めています。それ以外にも、大学の仕事のない日はなるべく家にいるようにしています。

 月曜は、朝、子どもを幼稚園や小学校に送り出し、家で仕事をしながら、少し家事もやりつつ、息子が小学校から帰ってきたら塾に送り、17時半に幼稚園に娘を迎えに行く。息子が塾に通いだすまでは、習い事のテニスに連れていっていました。月曜日は、妻は遅くなっても大丈夫なので、思い切り残業して帰ってくることもありますね。

 夕食の定番は、焼きそば。近所の食品スーパー「マルエツプチ」で、お気に入りの「深蒸し焼きそば」を5〜6玉買って、大量の焼きそばを作ります。

 以前はあらかじめ妻に作ってもらった料理を温め直していたこともあったのですが、自分で作っちゃった方が子どもたちも喜ぶので、ホットプレートを引っ張り出してジャジャーッと。ビール片手に豚こま肉を1kgくらい焼いて、つまみながら、次はキャベツ1玉分と麺6玉を投入。「できたぞー」と。大食いですよね(笑)。

これが入山家名物・おやじの焼きそば。「ホットプレート料理は偉大です」。焼きそばのほか、チャーハンも得意だとか

入山:子どもたちが焼きそばを頬張る顔を見るのが好きなので、よく写真を撮ってSNSに上げていたら、親しくさせていただいているユニリーバ・ジャパン取締役の島田由香さんが、「うちの息子も食べに行かせたい」とコメントしてくれました(笑)。念のためですが、他のメニューも作りますよ。餃子もチャーハンも、カルボナーラも得意です。

 僕はたまたま、自分でスケジュールを調整できる学者という職業だから、こういう日常を送れるわけです。ただこれからは働き方改革が進んで、企業に勤めるビジネスパーソンの勤務スタイルも自由度が高まれば、日本の育児の風景は変わると思いますよ。