「オトコが育児に参加するのが当たり前」の時代に変わりつつある。旬の経営者や学者、様々な分野で活躍するプロフェッショナルたちも、自らの育児方針や育休取得についてパブリックに言及することが増えてきた。優秀なリーダーたちは、我が子にどんな教育を与えようとしているのか。また自身はどう育てられたのか。そしてなぜ、育児について語り始めたのか。 連載1回目に登場するのは、早稲田大学大学院経営管理研究科の入山章栄准教授。SNS(交流サイト)などで、子育ての様子を公開する入山准教授は普段、どんなふうに子供や妻と向き合っているのか。そして入山准教授自身は、どのように育てられてきたのか。直球で聞いた。

入山章栄・早稲田大学大学院准教授。東京都在住。開発援助関係の機関で働く2歳下の妻・裕実さん、10歳の長男・章太郎くん、6歳の長女・実紗ちゃんの4人暮らし(取材日/2018年1月19日)

入山先生は気鋭の経営学者として活躍する一方、2児の父として育児に携わり、SNSでは頻繁に家族の写真をアップしています。「経営」と「育児」のどちらにも深く関わっている立場として、両者に共通点はあると思いますか?

入山先生(以下、入山):僕はあくまで学者なので、経営そのものを偉そうに語る資格はありません。でも、組織と子ども、この2つを育てるのに共通しているのは「自己肯定感を高めることの重要性」ではないかとは思います。

 これは僕がいつも伝えていることですが、チャレンジングな事業に立ち向かうには、「自分はやればできる」という自信や、セルフエフィカシー(自己効力感)を備えていることが重要なのは、経営学の研究でも分かっていることです。

 このロジックが子育てにも共通していると気づいたのは、医師・カウンセラーの明橋大二さんの『子育てハッピーアドバイス』(1万年堂出版)を読んだ時でした。

 僕は普段、マニュアル本をほとんど読まないのですが、この本だけはすごく共感しました。子どものありのままの感情を受け入れて存在を尊重する考えは、そのまま組織論に生かせると思いますね。

 一方で、経営と育児の決定的な違いもあります。それは育児に“答え”がないことでしょう。経営にも答えがないとよく言われますが、一定の期間でどれだけ企業が成長したかという結果と照らし合わせながら、経営手法の成否を評価することはできます。

 けれど育児の場合、まず「何をもって成功とするか」というにも答えすらありません。たとえ有名大学に入って、一部上場企業に入社できて、結婚ができたとしても、その人が本当に幸せな人生を送れたかどうかは、本人が死ぬ瞬間まで分からない。そして、子どもが天寿を全うして死ぬ瞬間に、親が立ち会う確率は極めて低い。

 ということは、育児に正解はないし、あったとしても立ち会えない。それでもなお、親として子どもに何を与えていくか。答えのない問いを永遠に立ち向かうのが子育てなのでしょうね。

(インタビュー撮影は鈴木愛子、ほかも同じ)