経営者の仕事は多様な働き方をする人を組み合わせること

大竹:上田さんは冒頭、全部自分で決断しなきゃいけない悩みばっかりだっておっしゃいました。そもそも自分は何を大事に思っているのか、その優先順位も含め実は決まっているのに、それに対してなかなか結論を出せないというのは、どうしてでしょうか。

上田:それは誰かに背中を押してほしいということでしょう。

 本人もだいたい、薄々は分かっているんですよ。優先順位はこれが第1、あれが第2という具合にね。だけど、それに自信がない。いいかな、いいかなと、ずっと悩んでしまう。そんな人が、増えているんじゃないかね。

 やっぱり、時代の変化だろうね。僕らの年代だったら、そもそも選択肢が少ないということもあったのかもしれない。男性だったら僕みたいに、優先するのは家庭じゃないと(笑)。自分や、仕事や、嫁はんは後や、という人が今より多かったでしょう。この選択肢もある、あの選択肢もあるなんてじっと長い間悩むよりも、その場で踏ん切りをつける。そして、物事の考えをリセットするということのほうが多かったように思う。

大竹:今の時代よりも、社会全体で何を優先すべきかという考え方が、なんとなくはっきりしていて、それに個人も迷わず従っていたという感じなんでしょうね。

上田:そうかもしれない。だけど、社会の価値観が多様化したと言われる最近だって、個人として何を大事に生きていくのか、優先順位を明確にすることはすごく大事だ。

大竹:それが振れてしまっては、何事にも打ち込めない。

上田:まず、自分が今、何を大事にしたいのかという優先順位を決めなさい。そうすると、おのずと自分の行動がどうなのかって決まってくるはずだから。ところが、優先順位が振れてしまうと、いつまでも結論が出なくなってしまう。

大竹:上田さんは、仕事が第一という優先順位が固まったのはいつごろからですか。

上田:入社3年目くらいかな。入社してしばらくは、家庭もなかったし独身だから、ほかの仕事もやってみたい、もっと自分の能力を出せる会社があるんじゃないかとも考えたよ。だけど、考えてみたら、どの会社へ行ったって似たような状態になるだろうなと思ったんだ。最初は嫌なこともあったけど、あと1年、あと1年と思って3年ぐらいやったら、いい会社やなと思えるようになった。

 いろいろな上司もいて、「こんな人間ばっかりか、この会社には」とも思ったけど、続けているうちに、自分がダメだっただけのことも多くてね。

大竹:この相談者の会社がどうかは分かりませんが、家庭優先の社員もいていいという理解がある職場と、そうじゃない職場もあると思います。最近は、いろいろな働き方を認めようという風潮もありますが、本当は仕事優先にしてほしいという経営者もいると思います。そういう本音と建前がある中で、言い出しにくいということもありますよね。

上田:まあ、今は国を挙げて働き方改革に取り組んでいるくらいですから、やっぱり働き方も多種多様になってきているわけです。ダイバーシティーが大切だなんて言われることも増えたけど、経営者というのはみんな分かっていますよ。昔みたいに、全員がフルタイムで残業もして、しかも年功序列で、なんていう企業というのは、もう生き残れないからね。

 いろいろな考え方や働き方をする人たちを、1つに組み合わせて事業を成し遂げていくのが会社であり、経営者の仕事なのでね。時短で働く社員もおれば、フルタイムで残業もいとわない社員もおる。多様な人が組み合わさっているのが、会社なんですよ。

 相談してくれた彼女の会社だって、きっとそうでしょう。彼女以外にも、いろいろな働き方をしている人がいるはずだし、似たような悩みを抱えている人だっているかもしれない。

大竹:だからこそ、心配せずに自分の悩みを会社に伝えてみることが大切というわけですね。

上田:僕も、社員が120人くらいの食品工場のトップをやったことがあるんだよね。女性が9割くらいで、平均年齢は65歳。僕が30代のとき。母親より上の、きれいなおば様たちばかり。会社に来ない人もいるんだよね、忙しい時に限って(笑)。マイクロバスでおうちまでお迎えに回って乗せてくるわけだけど、それでも来てくれない。じゃあ、辞めてくれと言うかといったら、言わないよ。彼女に辞めてもらったら困るのよ。

 そういった人が少なからずいる中で、来ない人の穴を埋めるために、なんとかローテーションを組み直す。でも、元気がいい50代の若いお姉さんたちにお願いすると、今度は「いやー、私たちは時間短縮勤務で決まっているから、今ここで働けているんです。だから、これ以上は働くのは無理です」と言うんですよね。だったら辞めてくれとなんて言うと思う?言わないよ。今までそこの時間帯で元気に働いてきてくれたんだから。貴重な社員を失ってしまう。

 いろいろやって、それでも穴を埋められないんだったら、それはもう、新しい人を採用するしかない。それは、企業として当たり前のことでね。

 だから、今回相談をしてくれた彼女も、まずは自分の優先順位に素直になって、それに従って会社に自分の考えを、まず伝えてみて下さい。それが、悩みから脱する第一歩だよ。

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12/15ウェビナー開催、「外食を救うのは誰か」第1回――すかいらーく創業者の横川氏が登壇

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■日程:12月15日(木)19:00~20:00(予定)
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