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 ユニー・ファミマHD相談役、上田準二さんの「お悩み相談」。今回は「ダイバーシティー推進」を担当する20代の女性から。結果が見えずモチベーションが上がらないと悩んでいます。上田さんは、シカゴ駐在時代の体験を踏まえアドバイスします。

※10月23日に開催した「上田さんのリアル相談室」でのライブ相談の模様を再録しています。

悩み:社員数万人の大企業でダイバーシティー推進を担当していますが、結果が見えずモチベーションが上がらないばかりか、周囲から「楽な仕事」と見られ悔しいです。どうしたらいいでしょうか。

 会社の人事部に所属し、ダイバーシティー推進を担当している一般社員です。社員が数万人いるため、全体に浸透させるのは至難の業なのではないかと考えてしまいます。仕事の役割は理解できますし、ダイバーシティーから生まれるイノベーションが素晴らしいこともわかるのですが、結果が見えないためモチベーションが上がりません。周りからは楽な部署のように見られてしまい、悔しいですしやりがいがありません。どうすればモチベーションが保てるのでしょうか。

(27歳 女性 会社員)

(写真:的野弘路)

大竹剛(日経ビジネス 編集):次も女性からの相談です。

 連載を始めたとき、上田さんは男性ですし、『日経ビジネス』も男性読者が多いので、おそらく男性からのお悩み相談が圧倒的に多いんじゃないかと思っていました。けれども、今どういう状況かというと、かれこれ連載をスタートしてから90件ほどのお悩みが寄せられているのですが、その半数以上は女性です。

本連載で反響の大きかった35の相談が1冊の本になりました!

 何で女性が多いんでしょう。上田さんは心当たりはありますか。

上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):なんでだろうね。大竹さんはどう考えているの。

大竹:おそらく、職場でいろいろと悩んでいても、周りに気楽に相談できる年上の男性上司が少ないのではと思っています。だけど、上田さんなら聞いてくれるんじゃないか、と期待しているのではないでしょうか。

上田:なるほどね。

大竹:男性上司にも父親にも相談しにくいけど、上田さんなら受け止めてくれると。

上田:そうか。うれしいねぇ。

大竹:ということで、今回の相談についてはどう受け止めますか。

上田:「ダイバーシティー」というのは、最近の流行ですよね。大企業なら、どこも「ダイバーシティーは大事」と言っているでしょう。ダイバーシティーを推進する専門部署などを作ったりして。もちろん、ファミリーマートにもありますよ。

 では、「ダイバーシティー」とはいったい何なのかというと、人種、国籍、学歴、性別などかかわらず、有能な人材を集めて、そういう企業の集合体を作ろうというのが目的ですよね。

大竹:ですね。

上田:であれば、今やっているダイバーシティー推進は、今日やって明日できるような話じゃないんです。5年、10年、もしかしたらもっとかかるかもしれない。あなたは、そういう仕事をやっているんです。

 女性をたくさん採用すればダイバーシティー推進になるのか、外国人の採用を増やせばダイバーシティー推進になるのかというと、必ずしもそうではないでしょう。多種多様な才能を持った人間集団を作っていくんだということであれば、ダイバーシティー推進というのは、女性とか国籍とかだけではなくて、どんな多様性も受け入れる職場環境を作っていくことだよね。

 しかも、多様性が高まったからといって、業績に反映させるような成果がすぐに出るかと言えばそうではありません。ファミリーマートの場合でいえば、私が社長になったころは65%が男性客だったんです。それを、女性客を増やそうといろいろと手を打ってきました。例えば、女性が望む商品を作るにはどうするか。それには、やはり女性の感性が重要だということで、商品本部に女性を多く登用するといったことを進めてきました。

 海外展開についても、日本から社員が押し掛けるのではなくて、現地の人たちを積極的に採用して、現地の人たちが活躍する場を提供することを心掛けてきました。

 でも、こうした取り組みは、今日やって明日すぐに成果が出るというものではありません。長期的に取り組んでいく必要があるんですよ。

 つまり、あなたはその長期戦略の中で、今はそのベースを作る仕事をしているんです。ところが、周りからは楽な仕事をしていると見られている。しかし、そんなことを気にしなくていいんです。

 ただし、会社にそういった文化を広めていくためには、自分らがやっている仕事を社内広報や、ときには社外のメディアなどを通じて、あなたがやっている取り組みを発信していく必要があります。少しずつでもいいんです。成果と呼べなくても、ダイバーシティーを推進したことによる「変化」を、ほかの部署で働く人たちにもしっかりと伝えていってください。

 自分からアピールしていかないと、いつまでたっても状況は変わりませんよ。