ユニー・ファミマHD相談役、上田準二さんの「お悩み相談」。今回は入社2年目、難しい仕事に挑戦したことで、持ち前の明るさが失われてしまった方から。「明るい私」を維持できずに悩んでいます。上田さんが「上田流、心の“デトックス”」を伝授します。
※11月7日の掲載分から、10月23日に開催した「上田さんのリアル相談室」でのライブ相談の模様を再録しています。
悩み:入社2年目。私はいつも職場で明るく振舞ってきました。誰も手を付けない仕事にも率先して取り組んできました。しかし、最近はいい結果を出せず、泣いてしまうこともあります。完璧に振舞えず、焦ってしまいます。どうしたらよいでしょうか。
上田さんの連載、毎週楽しみに読んでいます。WEBサイトの制作会社で働いていて、入社2年目です。職場はいい雰囲気ではありますが、各個人の役割分担がうまく行われていなく、どことなく周囲の不満や負の空気を感じることがあります。
そのため私は、明るく振舞って、誰も手を付けないけど進めなければならない仕事をどうにかしようと取り組んできました。しかし、難易度が高かったり、自分だけでは対応しきれなかったりして、いい結果を出せていません。
感情的になってはダメだと思いつつ、最近、上手くいかないことが重なり泣くことも多いです。それが裏目に出て、今までに無い話し方を上司にして叱られてしまいました。
職場の人にとっては「明るい私」が当たり前ですが、今までのように完璧に振舞えていない自分がいます。これからどのように職場の人や仕事と向き合って行けばよいでしょうか。アドバイスをいただけますと幸いです。
(23歳 女性 会社員)
大竹 剛(日経ビジネス 編集):次は23歳の女性、会社員の方からです。お悩みを読むと、大変頑張り屋さんのようですね。
上田 準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):頑張り屋で明るいというのが、この方の取り柄というか財産なんですよね。
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大竹:そうですね。
上田:その財産を失ってしまうのは、本当によくないですよね。どんな悩みを抱えていても、持ち前の明るさを失わないでほしいな。
まずは、それをちゃんと維持、守っていくことを最優先して、難易度の高い仕事には手を付けるなとアドバイスしたい。
大竹:誰もが手を付けないような仕事を率先してやるのは、むしろ逆効果だと。
上田:そうですよ。
大竹:この方は、きっとすごく気が利く女性だと思うんです。向上心でつい、誰もが手を付けない面倒な仕事を拾ってしまう。それ自体は、悪いことではないですよね。
上田:そういうことができるというのは、すばらしいと思うよ。だけど、まだ23歳でしょう。自分のできる能力の範囲で、まず着実に仕事をこなして、それを積み上げていかないと。そして、その経験の下に難易度の高いものを順次やっていくんですよ。
仕事を着実にこなしてこそ、周りの人も上司も、あなたに「次、これをやってくれないか」と少しずつ、難易度の高い仕事をお願いするようになるんです。今は、その段階の前なんだから、自分から難易度の高いものにチャレンジするのは少し休みましょう。せっかく持ち前の明るさがなくなってきちゃうよ。あなたにとっては、その明るさを維持することの方が大事だから。
そもそも、誰も手を付けないという仕事は、このチームの中では、そこまで優先度の高い仕事ではないのかもしれないよ。
大竹:確かにそうかもしれませんね。放っておくわけですから。
上田:優先順位が高ければ、誰かほかの人がとりかかっているでしょう。
それでも自分がチャレンジしたいのであれば、上司、あるいは同僚に、「私はこの組織の中で、このような仕事をやるべきでしょうか。私はやってみたいのですが、1人ではできません。助言をいただける方は誰かいないでしょうか」と聞いてみてください。それでもし、必要があれば、上司も同僚も、「じゃあ、一緒にやろう」となると思うよ。
そうでもないのに、自分で勝手に難易度の高いことにチャレンジして、泣いてしまうほど悩んであなたの良さが失われてしまうというのは、もったいないよ。
明るく仕事に取り組めば周囲の評価は変わる
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)
大竹:うん。もったいない。
上田:そんなことは、今はしない方がいいね。いや、いずれ難易度の高い仕事にチャレンジするチャンスは必ず来ますよ。あなたのような気が利く方には、次々とレベルの高い仕事が降ってくるようになりますよ。ただし、今はまだ、その前段階です。持ち前の明るさを、とにかく大切にしてください。
あなたはまだ、組織の中で何が必要なのかということを、はっきりとは理解できないかもしれません。まず今は、自分の基礎的な力を高めていくことに集中した方がいいと思います。
大竹:上田さんが入社2年目のころは、どういうお仕事をされていたんですか。
上田:私は最初、経理に配属されたんです。
大竹:そうでした。
上田:当時、経理の仕事をコンピューター化しようとしていました。みんな手書きで伝票や帳簿を記入していたんです。それをコンピューター化しようというのですが、もう朝から晩まで、その手書き伝票や手書き帳簿をコンピューターに移行させる仕事なんです。つまらないでしょう(笑)。
大竹:まさか、そのような仕事を商社に入ってやるとは思ってなかった。
上田:思ってもいなかったし、しかもまあ、上司からああだこうだ言われながらやるわけですから、面白くないよ。結果もミスだらけ。
大竹:そんなとき、上田さんは持ち前の明るさは維持できたのでしょうか。
上田:一応ね(笑)。間違えるたびに「すみません! 今晩中にやり直します」とか言って、にこっとスマイル。「あいつ、ばかじゃないか」と周りには思われていましたよ。
だけどね、どんな悩みを抱えていても、明るさや笑顔を努めて表に出すようにしていたな。そうすると、自分自身だけじゃなくて、周りも、「あいつはめげずに頑張っているな」と思ってくれる。新しいことをやるわけではなく、ルーティンワークでも、そんな姿勢で徹底的にこなしていたら、2年目くらいから周りの評価も「あいつ、ばかじゃないか」から「きちっと仕事をするやつ」に変わってきたよ。
経理の次に営業に出されたのは、そんな評価があったからじゃないかなと思うんです。まあ、実は上司が僕のことが嫌いで追い出したのかもしれないけどね(笑)。
大竹:とはいえ、いろいろ仕事で失敗をすると、落ち込むこともあると思うんです。上田さんもおそらく、たくさん失敗してきたと思うのですが、そんなときはどうやって自分を奮い立たせて、明るさを保ってきたのですか。
週に1回は完全に「デトックス」
上田:意識してやったわけじゃないですけど、僕は仕事帰りに必ず、お酒を飲んで、「なにくそ!」っと発散していました(笑)。
まあ、お酒を飲むかどうかは、その人次第だと思いますが、ようするに、今日のことは明日に引きずらないということです。明日もまた、似たような嫌なことは起こるんですよ。それを引きずってしまうと、どんどん、積み重なってしまうでしょう。そうなってしまうと、どんな人だって持ちこたえられません。だから、毎日リセットするんです。
僕みたいにきゅーっとお酒を飲むのでもいいし、おいしいご飯を食べるのでもいいし、好きな本を読むのでもいい。とにかく、今日あったこと嫌なことは、今日のうちに忘れてしまう。
前回の相談で、「日曜日は布団から出ない」なんて言ったでしょう。あれも、心身ともにリセットするには大切ですよ。心身無にして、ばたーっと寝ていると、脳の免疫力、それから内臓の免疫力が改善されるんですよ、きっと。食事もしないくらい、何もしない。水は飲んでいいけど、胃や腸にも徹底的に休暇を与えるんです。
大竹:なるほど。今でいうデトックスみたいですね。そんな方法、どうやって覚えたんですか。
上田:自然とね。何も食べずに夕方を迎えると、もちろん空腹になるのですが、何となく体の調子が、ものすごくよく感じるんですよ。
方法は何でもいいと思うんです。気持ちをリセットするやりかたは、一人ひとり違うでしょうから。でもね、とにかく毎日、その日にあった嫌なことは翌日に持ち越さないように心がけて、週末は心身ともにリフレッシュするんです。それが僕の場合はお酒と寝ることだったわけだけどね。
今回、相談を寄せてくれたこの方にも、自分の明るさを維持することを最優先に考えて、肩の力を抜いてと言いたい。まだ入社2年目、焦ることは何もないよ。気配りができるあなたは、背伸びをしなくても自然と、難易度の高い仕事を徐々に任されるようになりますから。
読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。
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*この連載は毎週水曜日掲載です。
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◇概要◇
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<第1章 人間関係に効く>
Q 上司の顔色ばかり見る組織に辟易/Q 上司が危機感を持っていない/Q 理不尽な部長の罵倒に耐えられない、など9個
<第2章 自分に効く>
Q 成長できる「前の職場」に戻りたい/Q もうここで「昇格」は終わり?/Q いいかげん、ぎりぎり癖を直したい、など15個
<第3章 恋愛・生き方に効く>
Q 安定した仕事を持つ男性の方がいい?/Q 出産のタイムリミットが近づいて/Q 年収も家柄も良いのに婚活失敗、など11個
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