ユニー・ファミマHD相談役、上田準二さんの「お悩み相談」。今回は地方の小さな事務所で働く団体職員から。不本意な理由で降格され、なにか「ぎゃふん」と言わせたいと悩んでいます。そんな男性に上田さんは「そんなことをしても痛快なのは一瞬だけだ」と諭します。
悩み:雇っていた非常勤の社員を法律に従って辞めさせたら、理事長から報復人事にあいました。ルールを守った私は浅はかなのでしょうか。なにか「ぎゃふん」と言わせるために反撃したいです。
地方の団体職です。職場も10名の小さな事務所です。先日まで責任者を仰せつかっておりましたが、謀反(解任、降格?)にあいました。
今までダラダラと非常勤等を使っているやり方を一新して期限を決めて行こう。(法律どおりに!)として3月に期限だからと、やめさせたら報復人事にあいました(笑)。 どこかの大学の様に理事長さんが人事権を握っているので降格されました。
別に、後悔も不満もありませんが、昔からの考え方の”老害”に納得いかなくて。もちろん、人材が一番大切であることはわかりますが、期限があることを守った自分が浅はかなのか、ダラダラと雇用して飼い殺しにする方がいけないと思いますが?
古参の理事長さん達に”ぎゃふん”と言わせたい。まっ、一部からは自分のコミュニケーション不足とも言われますが、説明しても理解してなかったみたいです。開き直って、歳も歳なのでしがみついてでも(笑)、定年まで居るつもりですが、また、報復が無いかと心配でもあります。
(52歳 男性 団体職員)
大竹 剛(日経ビジネス 編集):上田さん、先週の火曜(10月23日)はありがとうございました。この連載始まって以来、初めての対話イベントでしたが、大盛況でしたね。書籍『「相談役」の相談室』の発売に合わせて紀伊國屋大手町ビル店内のカフェ「紀伊茶屋」で開催したわけですが、定員25人のところ満席でした。大学1年生の女性から男性起業家まで、さまざまな参加者から直接のお悩み相談もありました。
上田 準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):いやぁ、最初はどうなることかと僕も緊張したけど、皆さん楽しんでくれたのかな。
大盛況だった上田さんの「リアル相談室」。左は日経ビジネス編集の大竹(写真:的野弘路)
本連載で反響の大きかった35の相談が1冊の本になりました!
大竹:もちろんです。当日、上田さんに聞いてみたいことを事前に受け付けた日経ビジネスRaiseを見てください。参加してくださったファンの皆さんから、続々と感想が寄せられています。
「悩みをあるがままに受け止め長期的に考えることで、前向きに生きていけばいいじゃないかというメッセージをいただき、まさに目からウロコでした」(Naho Takahara 大学1年生)
「これから上田さんの元気のレシピを拝読する際には上田さんをもっと身近に感じることができそうでとても楽しみです」(栃木ひかる)
「日ごろ、つい斜に構える癖がついてしまいますが、上田さんの、どんな悩みも真正面から受け止める姿勢と懐の深さに温かい気持ちになりました」(鈴木瞳 マカイラ株式会社)
「上田さんのお話を聞くうちに、直接的ではないにせよ、『余計な心配をするな。好きなことを存分にやってみなさい。』というメッセージをいただけたような気がして、モヤモヤが晴れました」(鈴木一真 慶應義塾大学商学部3年)
などなど、どれも上田さんへの感謝の言葉にあふれています。当日は、以前このコラムに悩みを寄せてくれた女性も上田さんを一目見たいと、来てくださいました。
上田:ありがたいねぇ。僕はね、この相談室を僕なりの社会貢献活動だと位置づけているんです。僕のこれまでの人生経験が少しでも皆さんの悩みを解決するために役に立つのなら、うれしいね。とにかく、「元気、勇気、夢」を忘れないでほしい。
大竹:上田さん、これからも引き続きよろしくお願いしますね。
当日の「リアル相談室」の模様は追って、来週以降、順次、ご紹介していきます。それでは今日も、いつものように始めましょう。
今日の相談は、人事で受けた仕打ちに対する反撃を画策している方からです。何やら、穏やかではありません。
定年まで居たいのならコミュニケーションを
上田:まず、この方は今52歳で、定年までしがみつこうと意思決定をしているので、まずは職場の中で自分が楽しく仕事ができるように努めてやってみましょうと言いたい。報復のようなことをしたいと考えていては、楽しくないんじゃないかな。
楽しく仕事をするためには、まず、理事たちとのコミュニケーションを今までより密に取ること。相手のことが好きだろうが嫌いだろうが、まずはコミュニケーションです。
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)
例えば今回、非常勤の方を期限が来たからと辞めさせたと言っていますが、これは事前に理事長や理事たちに、「期限が来ました。法令通り辞めていただく必要があります」とあなたはちゃんと説明しましたか。やはり、誰であっても仕事を辞めてもらうということは、担当者の一個人で決めることではなく、組織全体でそれを承認することが必要でしょう。やめてもらう人がだれであっても、その人の人生にとっては大きな問題なのですから。そのためのコミュニケーションが必要だったのではないですか。
これからも、同じようなことがたくさん出てくるでしょうから、理事長や理事と、口頭あるいは書面でコミュニケーションをとる努力をしてください。そうすると、これまでの関係とは変わってくるでしょう。
そのうえで、定年までしがみついていてください。
大竹:確かに。今の職場にしがみつこうと決めているのに、自分からしがみつきづらくするのは得策とは言えません。
上田:そのような仕事のやり方を反復・継続していくことで、この人はきっちりと仕事ができる人だという評価を得て、降格ではなく今度は昇格ということもあり得るんじゃないかな。別にお望みではないかもしれませんが(笑)。
たった10人の小さな事務所でしょう。だから、ちゃんとそういったコミュニケーションをとる、話し合いをすることは、大組織以上に欠かせませんよ。小さい事務所なんですから、報告・連絡はすぐにできますよね。まあ、10人の組織の中で昇格・降格って騒ぐほどでもないような気がしますが。
大竹:小さい組織だからこそ、「俺は聞いてない」みたいなことが結構あるのかもしれないですね。
上田:地方の団体職って言っているね。きっと、これまではアットホームな雰囲気でやってきたんじゃないかな。みんなでお茶菓子を食べたり、昼飯を食べに行ったり。辞めさせた非常勤で雇っていた方も、誰かの縁故で働いていたとか、そういうこともあるのかもしれない。だからこそ、勝手に辞めさせたことに反発が起きたとかね。
痛快な思いをするのは一瞬だけ
大竹:小さい職場で雰囲気を自ら悪くすることはないですよね。ただ、法令順守や仕事の効率化のためにやるべきことをしっかりやることも必要でしょう。同時に周囲の理解も得ていく必要もある。なかなか、高度なコミュニケーションが必要かもしれません。
上田:そうですね。だけど、誰かを「ぎゃふんと言わせる」ことを目的に仕事をしてはダメですよ。ぎゃふんと言わせたって、痛快な思いをするのはその一瞬だけです。そこで働くことが楽しくなりますか?
定年までしがみつこうとしているあなたがやるべきことは、ぎゃふんと言わせることではなくて、自分が働きやすい環境を自分でつくることです。
大竹:法律通りに辞めてもらったことは良かったことなのでしょうか。
上田:いいか、いけないか、ということの前に、10人しかいない職場なんだから、まず理事会にきちんと事前に諮るべきだったね。そもそも、そのような契約書があるのであれば、それに沿って辞めてもらうこと自体は悪いことではない。
大竹:やはりコミュニケーションですね。
上田:「ダラダラ飼い殺しをしていていいのか」とあなたは言うけど、ぎゃふんと言わせることを目的に仕事をしつつ定年までしがみつこうだなんて、あなたこそ、皆さんからダラダラしていると言われかねませんよ。まずは、しっかりコミュニケーションをとる努力をしましょうよ。
読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。
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*この連載は毎週水曜日掲載です。
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◇概要◇
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<第1章 人間関係に効く>
Q 上司の顔色ばかり見る組織に辟易/Q 上司が危機感を持っていない/Q 理不尽な部長の罵倒に耐えられない、など9個
<第2章 自分に効く>
Q 成長できる「前の職場」に戻りたい/Q もうここで「昇格」は終わり?/Q いいかげん、ぎりぎり癖を直したい、など15個
<第3章 恋愛・生き方に効く>
Q 安定した仕事を持つ男性の方がいい?/Q 出産のタイムリミットが近づいて/Q 年収も家柄も良いのに婚活失敗、など11個
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