亭主関白と思っていたが、完全に女房に転がされていた
大竹:ただ、上田さん。逆に女性の立場から言えば、何でそこまで旦那に気を使わなきゃいけないのかという思いもあるはずですよ。もう、普段は子供の面倒を私が見ているんだから、週末くらいは旦那がもっと気を使うべきじゃないかと。
上田:旦那が気を使うべきというのは?
大竹:働いている女性から見れば、「私だって働いているんだし、忙しいんだし、あんたの気持ちをいちいち汲み取っている余裕なんてないわよ」と。むしろ、旦那が奥さんの気持ちを汲み取るべきなんじゃないかという意見もあるかと思います。
上田:ごもっとも。だけど、この旦那みたいなタイプは、気を使ってもらうように自ら変わることを期待するより、奥さんが旦那をそうなるように飼いならすほうが簡単だよ。
大竹:飼いならす?
上田:奥さんがこの男を飼いならす。
この旦那さんは、何かやらなきゃいけないという気持ちは持っているわけだから、そういう気持ちを持っている旦那は、飼いならされやすい。飼いならすことに成功すれば、これから先の夫婦関係、家族関係、非常にうまくいくでしょう。
大竹:こういう男はどうやったら飼いならせるんですか。
上田:もうね、おだてていればいいんですよ。
大竹:それだけですか?
上田:とにかくおだてまくる。「あなた、仕事も一生懸命で、夜遅くまで頑張って、家族のこともこんなに気を使っていろいろやってくれる。ありがとう。だけど、私たちはあなたがイライラするのは楽しくない。もう少しゆったりして」とね。「食事は、行列に並ばなければいけない有名店は、子供も私もあまり好きじゃない。夜、ゆっくり旅館でもホテルでも、おいしいものを食べられれば、もうその方が幸せ」と。
この旦那は、奥様が何か言うと、「勝手にしろ」と言って黙ってしまって会話が成り立たないということのようだけど、まずはちょっとおだててご覧なさい。「あなたのおかげよ」とか何だかんだ言って。うまく飼いならすことを考えてほしい。
こういうタイプの男は飼いならしやすいですよ。僕なんか完全に飼いならされちゃったから。
大竹:上田さんはこういうタイプですからね。
上田:うん。やる気はある、だけどすぐ自分中心に何か決めなきゃいけないと考えてしまう、というやつね。自分でうまくいかなきゃイライラする。そういうタイプの男は、うまくおだてれば簡単に飼いならせる。
もうね、僕だって女房のやることに、すぐにイラっとしてワアワア文句を言ったり、ときにはガーンと怒ってみたり、自分では亭主関白だと思っていたんですよ。でも、実はそうじゃなかった。女房は「そうよね、そうよね」とか言いながら、「全然楽しくないよね、だけどあなたはこんなに良いところがある」なんて言われると、「ん?そうか?」なんてまんざらではない気になって、どんどん飼いならされていく。
大竹:上田さんには、自分が飼いならされているという自覚はあったんですか。いつ、気が付いたんでしょうか。
上田:あるとき、実家に帰ったんだよ。秋田の実家に。実家にはおふくろもおるし、当時おやじもおったし、妹が跡を取っているし。
実家に帰ると、僕は女房に「何座っているんだ、酒のあてから何から作って出せ」とか、言っていたんですよ。女房は「はいはい」って言いながら、全然、やらないんですよ。「はいはい」って言って台所に立つふりして、おふくろとぺちゃくちゃ話したり、ぼりぼりお菓子を食べたりしているんです。「何やっているんだ、お前」と言うと、「はいはい」って言う。
一応は、ちょこっとだけやってるそぶりは見せるんだけど、おふくろもおふくろで、「何言っているんだ、お前と一緒に遊びに来ているのに、そんなこと言うな」と僕に言うわけ。そうすると女房は、「いや、いいの、うちのお父ちゃんは偉いから。いいんですよ」と。
実家に帰るたびにそんなやりとりを何べんもしているうちに、おふくろが、「お前は完全に手のひらに乗せられている。亭主関白をきどっているけど、完全に転がされているぞ」と言われて、はっと気付いた(笑)。
大竹:言われて気付いた。
上田:気付いたときには、もう手遅れ。完全に、飼いならされてしまっておった。
つまり、この相談してくれた方にも伝えたいのは、旦那には言わせるだけ言わせておいて、結局、自分の行動パターンの中で転がしておくのが一番だということだ。
大竹:こういうタイプの男性は、もうこのままでいてくれた方が飼いならしやすい。逆に、奥さんにいろいろ気を使うようになってしまうと、ややこしくなる。
上田:そう。飼いならしやすい単純な男ではなくなって、より高度な対応が必要になる。
もう、今やうちの女房なんか自由人だよ。旦那を手のひらで転がしながら、世の中を自由に闊歩している。
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