大竹:そもそも、何で上司はこうなりがちなんですか。
上田:やっぱり何というかね。部下の面倒をバリバリ見ている、有能な管理者であるということを、上層部にアピールしたいんだろうな。特に、役員一歩手前のような管理職が陥りやすい。ようするに「自分はできる」ということを、さらにその上の上司に理解してもらいたいわけね。
会社もそれなりに、「一応あいつはできる」と評価しているので、本人も余計にこういうパフォーマンスに出てしまいがちなんだよ。ただ、あなた1人がこの上司にそういうことを指摘しても、この人はもう直らんでしょう。
大竹:どうしたらいいのでしょうか。
「バカは死んでも治らない」
上田:そうだよね。じゃあ、こういう上司の下で、どう自分の仕事に生きがいと楽しさを見出していくのか。
この上司には、大勢の部下がおるわけですね。あなたもそのうちの1人。まず、大切なことは、「おバカさんな上司ね」「よくあるタイプだわ」と軽く受け止めて、この上司の行動がいちいち気に障るとは思わないこと。そんなつまらんことにエネルギーを集中しないこと。どこにでもいるタイプだと受け流しましょう。この性格は、死んでも直らん。
そう思って、気をまず楽にしてください。彼の邪気、毒牙をあなたが真正面から全部受け止める必要はありません。ぱっとかわして、すっと立ち直ってください。
ただし、あなたはこの上司の傘下の組織の一員だから、指示されたことについては、きっちりとそれなりの行動をしなきゃいけない。それに対して、どんな結果を出してもこの上司はワーワー言うだろうけど、「また始まった、せいぜいわめいていな」と、そんなに深刻に考えないでください。
あなたが何か言ったところで、この上司の性格を変えられるものではないし、異動させられるものでもない。だけど、あなたは28歳で若いんだから、時期が来くればこの上司の方が先にあなたの前からいなくなりますよ。そういう上司の下でやったこともあるという経験を、いずれ懐かしく思い出す日が来ます。
あなた1人で深刻に受け止めてはだめです。ほかの同僚、部員だって、みんな同じ思いをしているわけだから。
大竹:だけど、ある意味、この上司の下にいる人は全員不幸ですよね。こういう上司というのは、いずれ上からは評価されなくなるものなんですか。
上田:だいたい、昇進は途中で止まっちゃうね。中にはレアケースで、役員になって副社長クラスまで行くこともあるけど、絶対社長にはなれない。まあ、世界の七不思議で、何であいつが副社長をやっているんだという人もいたけどね(笑)。
まあ、そういう例外は時にはあるけど、こういう上司は、まず一定のレベルで昇進は頭打ちになりますね。組織の中では、部下からどう見られているのかという話は、やはり上の方に漏れ伝わってきますよ。社長の耳にもね。
大竹:ある種、ものすごくお調子者ですよね。困ったことがあったら相談してと言っておきながら、最後は梯子を外すような。本人はよかれと思ってやっているんでしょうが、自覚症状がない。
上田:ないんだよ。これは「森の石松」だよ。親分である清水の次郎長にかわいがられている義理人情に厚い男なんだけど、「バカは死んでも治らない」とからかわれるようにどこか抜けている。そんな石松の子分になったんじゃ大変だけど、バカは死んでも治らないんだから、真面目に向き合ったら疲れちゃうよ。
君に任せたと言って、助言はない。それで困ったことがあったら相談してこいとも言う。面白いねぇ、この上司は(笑)。
Powered by リゾーム?