現役を早く退いた人は、終活の大先輩だ

大竹:早く現役を退いた人は、上田さんより終活の先輩なわけですからね。

上田:そうだよ。先輩どころか、大先輩だ。僕は、そういう大先輩から、どうやって自分の人生、最後のステージを豊かに過ごしているかを教えてもらいたいよ。

 中には、失敗しているやつもいるわけ。さんざっぱら、あれやろう、これやろうと言って、退職金がなくなってしまったというやつもね。どうするんだよと聞けば、「いや、もう年金と息子に世話になる」なんて。気楽なもんだよな。でも、それはそれで1つの生き方だし、そういうのも含めて、僕は教えを請いたい。

 そんな僕みたいな人間も多いと思うよ。巡り巡って、役員やら社長やらやってしまった人間にとっては、終活の時間はその分、短くなってしまっているわけだから。

 従って、この方は何も引け目に感じることはないな。退職してしまえば、会社人生はそこで完全にリセットされるわけだし、実際、同期会なんかでは、ほとんど仕事の話なんか誰もしませんよ。会社を離れて今やっていることとか、これから何をやるか、やりたいかといった話で持ちきりだね。クルーザーに乗りたいだとか言うやつもいれば、えらい高級な外車のスポーツカーを買うやつもいる。まったく、高速道路を逆走したらどうすんのかと言いたいよ(笑)。

 だけどね、現役時代にできなかったことがある人が、「これを今やっている」「これからあれをやりたい」と話しているを聞くのは楽しいんだ。まあ、老後の失敗談もいろいろあって面白いね。

大竹:人生、最後まで失敗はつきものだと。

上田:ええ、誰でも最後まで、人間ですから。女房との関係の失敗談なんかが多いよね、やっぱり。女はこうなるぞとか、うちの女房がこんなことしやがってとかね。それが結構楽しい。

大竹:上田さんが出る同期会というと、伊藤忠時代のですか、それとも大学時代のですか。

上田:大学時代のは同じ寮に入っていた寮生が多いね。これは毎年やっている。会社関係は年に2回から3回。決して役員だったとか、役職がどうだったとか、そんなようなことはお互い全く話題にすらしませんね。今日、明日、来年、自分は生きているのかといった話ばっかりですから(笑)。この相談してくれた方も、もう何も気になさらないことです。逆にあなたは、役員経験者から見れば大先輩なのですから。

大竹:終活という観点から見れば、役員をやってしまって終活のスタートが遅れるのは、むしろ不幸かもしれない。

上田:そう。もう僕なんかは、終活の新入生だから。新入生にいろいろと教えてほしいよ。

大竹:同期会、同窓会ではなくても、普段から大学とか伊藤忠とか、昔の友人とのお付き合いは多いのですか。

上田:いっぱいあります。僕なんかは、いろんな会社を渡ってきたでしょう。自分がいた会社ではなくても、取引先もいろいろあったしね。

 いずれにしても、仕事で一応区切りがついた人々が集まっているわけで、会社でどういう力関係にあったとか、どんな取引関係にあったとか、まったく関係ない付き合いですよ。またそうじゃないと、お互い続きませんから。だから、こういう会には、とにかく出られた方がいいですよ。もうオープンな気持ちで気楽にね。

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