社員との懇親会で一方的に話し続ける社長はダメ

大竹:会社の規模は全く異なるでしょうが、ファミマに来た当時の上田さんと、境遇には通ずるものがありますね。

上田:親父の会社を突然継ぐことになってしまってつらいな、と思うのではなく、これまでとは全く違って面白いチャレンジができるなと思って欲しいし、僕はそう思うようにしたね。

大竹:まず自分が面白がると、その状況を。

上田:うん、面白がる。これはチャンスだとね。業績が悪いというのも、業績を上げていくチャンスなんだと。そして、それは社員の気心を知り、自分を知ってもらう、いい機会でもある。

大竹:中小企業の事業継承を取材すると、2代目や3代目の若社長が古参の社員から見下されて苦労すると言った話もよく耳にします。

上田:そういうこともあるよね。でも、そうした古参社員には、若手社員も不満を持っていることも少なくないよ。だから、彼の会社が何人の規模かは分かりませんが、全社の懇親会だけではなくて、若手、中堅社員、古参社員といった具合にいくつかグループを分けてホワイを聞き出すといいんだよ。

 やってみれば分かることですが、出てきますよ、不満がどんどん。古参社員なら蓋をしてしまうような問題なんかが、若手や中堅の社員からはばーっとね。現場に近づくほど、マグマはいっぱいたまっているものです。だから、現場からホワイを吸収して、それに答えるハウを出すことが、求心力を高める上で非常に有効なんですよ。

大竹:逆に言えば、現場に耳を傾けないと、いつまでたっても古参の社員に好き放題やられっぱなし。

上田:そうそう。例えばこれまでAメーカーと取引していて、古参社員はそのことに全く疑問を持っていなかったとしましょう。実際、古参の幹部に聞けば、Aメーカーとの取引では売り上げが1億円あって利益が5000万円、粗利が5割もあると主張する。だけど、現場に聞けば、Aメーカーとの取引は業務量がとにかくたくさんあって大変な上に、それにかかる人件費などの経費が実は別のところに付いていた。見かけ上は粗利はいいけど、実際は全く儲かっていないということは、よくある話だけど、そういう実態は現場に聞かないとなかなか把握できないものなんだよ。

 だから、そうした実態を社長自らが把握して、古参社員にはトップダウンで「こういう理由だからAメーカーとの取引は採算が悪すぎる。むしろ、これからは新しいマーケットに挑む必要があるので、Bメーカーとの取引にシフトしたい」といった指示を出すしかないんです。

大竹:懇親会でうまく社員の不満を引き出す上田さん流のコツは何かありますか。

上田:まずは、自分がトップだからということで、懇親会などで一方的にしゃべる人がいるんですよね。社員の声を直接聞きたいと言っておきながら、ほとんど社長が話しているとか。それでは、もう何も意味はないよね。だから、もう社員に対して、お願いしゃべって、話して話して、という姿勢で望むべきだね。

大竹:ただ、そうは言っても社長にどこまで話していいのだろうと、社員はなかなか心を開いてくれないんじゃないでしょうか。

上田:その通りだと思うよ。だいたい、懇親会でばーっと意見を言う人は、準備して意見を言っている場合が多いよね。例えば10人集まったら、そういう準備万端な人を除いて、だいたい3〜4人は発言しないんですよ。

 だから、第2ラウンドをやるんだよ。時間が来たら、「さあこれから2部ダイレクトミーティングをやる」と宣言する。「今日、意見を言っていない人がおったよね。酒、さかな付き、管理職は1人なんぼ。その他の社員はタダ。ただし、泥酔する人は、意見を忘れてしまうと困るから、メモとペンだけ持っておけ。翌朝、忘れたとは言わさんぞ」と(笑)。

大竹:泥酔している社員にメモとペンを持ってこさせても、書くことすらできないかもしれないですよ。

上田:もう、そんな会も回数を重ねてくると、そういう社長の雰囲気が周囲にも伝わってくるから、「社長、すみません、ペンを忘れたので、ワイシャツに書いて下さい」なんて言う社員も出てくる。

大竹:それ、実話ですか。

上田:実話だよ。どうかと思うよな。でも、「記念に書いてくれ」とせがまれるから書いたわけ。そうしたら、その話が他にも伝わったんだね。四国かどこか別の場所でも、最初からワイシャツを差し出してきた社員が3人もいた(笑)。

大竹:それぐらいの雰囲気になってくれば、もうしめたもの。

上田:太鼓持ちばかりみたいな感じになると危ないけどね。だけど、僕だって商社からコンビニの会社へ来て、何もない中で、しかも社員が全国に散らばっていて、なかなか直接対話をする機会がなかった。懇親会で偉そうに経済ビジネス書を読むような話をしたって、信頼してくれないでしょう。まずは、やっぱり知りたい、知ってもらいたいという関係を作っていかないと。

大竹:今回相談してくれた方も、まず、そこからやれば大丈夫だと。

上田:はい、絶対に大丈夫です。

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