中小企業を経営していた父が亡くなり、後を継ぎました。サラリーマンとして働いてきて、まともにリーダーシップを発揮したこともないので、どうやって社員の心を掴めばいいのか、見当もつきません。業績も低迷していて、士気は低下しています。どうやって、会社を盛り上げ、社員のやる気を引き出していったらよいのでしょうか。
45歳 男性(自営業)

大竹剛(日経ビジネス 編集):今回は、父親から会社を継いだという、45歳、男性からのお悩みです。高齢化が進み、多くの中小企業経営者が後継者問題を抱えていると言われていますが、今回の相談者は父親が亡くなったことで、中小企業の経営を突然、引き継ぐことになったようです。ずっとサラリーマンをしていたということですから、勇気ある決断ですよね。ただ、業績が低迷し、社員の士気が低下してしまっています。盛り上げ上手の上田さんから、社員のモチベーションアップの仕方を教わりたいようです。
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):この方は今、45歳のようだね。振り返ってみれば、その頃が一番、仕事ができた時期だね。
大竹:この方は、少し自信を失っているのかもしれませんね。会社を継ごうという決断ができるくらいですから、サラリーマンとしても、これまでしっかりと実力を発揮してきたのではないでしょうか。でも、まともにリーダーシップを発揮したことがないと、謙虚です。
上田:サラリーマンであれば、上司のパワハラに遭ったとか、上司の顔を見て仕事しなきゃいけなかったとか、会社は危機感を持ってないと不満を抱いたとか、40歳を過ぎれば、それまでに何だかんだといろいろな経験をしてきていますよね。でも、この方は、もうそんな話は一切、関係のない世界に飛び込んだ。今は、自分がトップでやっていかなきゃいけないんです。
大竹:そうですよね。
上田:そういうものを全部、自らが解決していかなきゃいけない立場になったことを、まず自覚する必要があるね。脱サラして、先代から会社を引き継いだのですから、もうやるしかない。
さて、やるしかない中で、社員の心をどうやって掴むかと。これがまず、リーダーとしての第一歩なんですよ。
では、どうすればいいのか。おそらく、この方がこれまで勤めていた会社というのは、大企業だったのかもしれない。大企業では社員にとって社長は遠い存在ですが、中小企業はそうじゃありません。あなた自身が日々、社員と同じ場にいなきゃいけない。まずそれが大事です。
そして次に、勤務時間外、あるいは勤務時間を短縮してでもいいから、社員との懇親会を開くことです。しかも、頻繁にです。この方はそれまで他の会社にいたわけで、社員のことを知らないんだから。
ただし、社員にとってその懇親会が負担になってしまってはいけないよね。だから、そうならないようにするには、自分から社員の輪の中に入っていくことを心がけるべきでしょう。そうした懇親会を通じて、社長に言いたいこと、会社に期待すること、自分の仕事に対する悩みだとかを聞き出して、それを吸収することですね。
そうやって社員の思いを吸収した上で、今度は彼自身が、仕事のこと、会社のことをどう思っているのかを、自分の言葉で社員に向かって語っていかなければいけない。業績が悪いみたいですけど、悪いのは何が原因なのか、そして、それをどう改めたら、業績を上げていけるかということを語るんです。
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