こんな立派なお母さんはいない
大竹:妨害するために上海までついて来て、常に監視されたと。
上田:だけど、一般的な世間から見たら、これだけ娘を保護し、支援している親というのは、そうそういないよ。そういう母親の思いを、彼女には一度理解してもらいたい。
お母さんはもう80歳。彼女が言うように、もう何も言わないでしょう。だけど、お母さんは次に何を願っているかと言ったら、彼女が自分の好きなことをやって、きっちりと自分の生活を成り立たせることなんだ。ということは、自立して、成功することが、お母さんに対する最後のお礼と思ってやりなさい。親にお礼をするためにも、まずは自分でしっかりと生活の基盤をつくりなさい。
大竹:自立し、成功すれば、親を捨てることにはならないと。
上田:うん。成功すれば、それが親へのお礼になりますよ。
だから妨害されたという思いを1回リセットして、自分がこれまでお母さんにいろいろなことを言われながらも、結局は自分の主張を通してやってきたということを、落ち着いて振り返ってみてください。その間、お母さんはどのような思いで、お金の問題やら、自分の気持ちやらを整理しながら、彼女のことを支援してきたのかと。
大竹:お母さんの側にも、娘に対する相当な葛藤があったでしょうね。
上田:そうでしょう。それだけ、彼女のことを愛していたんだよ。ところが彼女は、その愛が妨害だと思っていた。
お母さんはこれから80歳になって、もう、彼女に対してあまりあれこれ言わなくなるでしょう。そういうお母さんに対するお礼は、彼女がきっちりと基盤を固めて成功することです。それは、親を捨てることにはなりません。周りの親戚も、きっと、そういうふうに見てくれるようになるでしょう。
大竹:何で海外で働くことにこれほどこだわるのか、その理由は書いてないんですが、学生の頃からそのような強い願望があったようですね。
上田:僕には、とにかく彼女は、反抗期がずーっと続いているようにしか見えませんよ。学生からの反抗期がね。親が言えば何でも妨害、邪魔したとなる。ずいぶん反抗期が長く続いているね。もう物の考え方、心の整理の仕方、これをちゃんとリセットして、自分中心じゃなくてお母さんの立場に立って、物事を考えてほしい。
大竹:むしろ彼女は、母親に甘えているんじゃないですかと。
上田:そうそう、甘えている。
大竹:こんなに恵まれている人は、いないと。
上田:娘と一緒に上海で飲食店を開こうなんていう親が、どれほどいますか。
大竹:でも80歳というと、心配ですよね。ご高齢ですし。
上田:そうだね。お母さんの方も、自分が何か言えば言うほど、この子は反抗を続けると、ようやく悟ったんだろうね。
大竹:悟るまで、ずいぶんと長くかかりましたね。
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