今、私は採用活動を一任されており、未経験の中途入社1年目ながら責任と権限のある立場に置いていただいています。その中で「学校を訪問する」という正攻法だけではもはや学生を集められず、何か対策を打ち出していかなければなりません。しかしながら、その企画を打ち出すことに非常に怖さがあります。「あいつは何をやっているんだ」「そんなことにお金や労力を使って結果が出るのか」と思われることが恐ろしいです。
また、「学校を訪問する」という選択肢の中でも、例えば、学校で学生に話しかけて取り込んでいくといった、ズレているが結果に結びつきそうな方法があります。しかし、そこでも学校からクレームが来たら同僚や上司に白い目で見られる、といった不安がどうしても出てきてしまいます。
上田さんのデンマークでの豚肉の買い付けのお話を拝見いたしました。あのようなやり方を、もしかしたら自分でも考えとしては浮かぶかもしれません。ただ、実行に移す勇気が出るかというと想像できません。考えていることを実行する強い気持ちが欲しいです。ご経験の中でのお話、あるいは叱咤激励いただければと思います。
27歳 男性(会社員)
大竹剛(日経ビジネス 編集):今回は、27歳の男性会社員のお悩みです。未経験で採用された中途1年目だとか。それでも、採用活動を一任されているということは、きっと、上司の信頼を勝ち得たんですね。

ただ、採用活動の一環として学校訪問などをしているのだけれど、従来通りのやり方でいいのかと疑問も持っているようです。とはいえ、何か新しいことをやろうとすると、上司から怒られるのではないか、学校からクレームがくるのではないかと、不安を抱いています。
上田さんのデンマークの話とは、大みそかにデンマークに飛んで、現地の輸出組合のトップをビルの前で待ち伏せして捕まえて、たった一人で交渉したというエピソードですね。ハプニングもあったものの、競合商社からベーコン用豚肉の輸入ビジネスを奪うことに成功しました。その時の機転を利かせた行動に、この相談者はちょっとした憧れを抱いているようです。色々とアイデアは浮かんでいるようですが、それを上田さんのように実行に移す勇気がないとのこと。上田さん、助けてあげてください。
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):デンマークでの話は、なかなか好評だったようだね。だけど、まあ運もあるのだから、それをまねようとしても、いつもうまくいくわけじゃないよ。
それで、今回の相談を寄せてくれた彼は、とにかくやる気はある、頑張りたい、だけど結果を恐れている。失敗したらどうしよう、学校からクレームがきたらどうしよう、上司から怒られたらどうしよう、ということだよね。
結果を恐れるということは、よくあることだ。経営者は「失敗を恐れるな」「前向きにチャレンジしろ」なんて言いますけど、社員からしたら、あれはやっぱり、失敗したら怒られるのではないかと思ってしまうものだからね。
大竹:そう言う上司ほど信用できないということもありますから。
上田:うん。そもそも経営者や上司が「失敗を恐れるな」というのは、方針や戦略が決まっても、実際に現場で戦う兵士、つまり会社なら社員が失敗を恐れてしまったら、もう最初から戦いにならないからなんだよ。ただし、ここで注意しないといけないのは、戦い方、つまり戦術を決めるプロセスだね。これさえ間違えなければ、怒られることはないよ。
この会社の場合、採用が非常にしづらくなってきた中で、いろいろな形で優秀な学生を確保しようと考えているということだよね。それが、おそらく一つの方針、戦略なのでしょう。しからば、その戦略を実現する戦術、つまりやり方としては、何があるかと考える。
例えば、いくら今までの方法では採用が難しいからといって、自分で学校へ行き、手当たり次第に学生を捕まえて、うちの会社へ来ないかと声をかけたら、さすがに学校からクレームも受けるだろうし、いろいろな問題が生じる危険性もある。
こういったことについて、失敗する前に上司なり決定権限者なりに、私はここの大学の学生をできるだけ確保したいので、こういう内容の活動を大学構内でやろうと思っていますと、伝えてみたらどうかね。まず、これからやろうとしていることを、あらかじめ上司に伝えてから実行に移せば、失敗したって怒られることはない。ただ、そういうことを上司に言わないで自分勝手に行動して、失敗したら、それは怒られますよ。
大切なのは、失敗してもいいように、ちゃんとリスクをヘッジしておくことです。ようするに、保険をかけるんだ。
Powered by リゾーム?