社会人は「地動説」の中で生きていく

大竹:25歳で咳喘息を患っている女性です。過重労働でストレスということかもしれません。仕事自体も、自分が思っていたようなものではなかったようですね。チーム全員が残業100時間を3カ月続けているそうです。これはもう、かなりひどい状態です。

上田:まずは、体調を整えてください。咳喘息は癖になっちゃうとなかなか治らないですからね。

 僕も、しょっちゅう咳が出るんですよ。それですぐに女房に言われるわけ。「あなた、その咳、何とかならないの?」とね。「これは俺のバイオリズムの中で、愛すべき咳なんだ。これがリズムなんだ」と反論するんだけど、「病院に行った方がいいんじゃないの?」と言われる。

 まあ、僕自身は持病というか体のリズムだと本気で思っているから、全く気にならない。今に始まったことじゃなくて、20代の頃から、上司から「咳ばっかりゴホゴホいって、お前たばこやめろ」と言われてきた。

 だけど、まあ早く直したほうがいいね。

 そのうえで、彼女は25歳というけれど、社会人になって何年経つのかな。まだ短いですよね。

大竹:大卒だったら3年くらい。

上田:そうだね。それでもう既に転職しているわけでしょう。

 前の職場は残業代がまともに払われないような環境だったというから、そんな会社は辞めたほうがいい。今の職場も、チーム全員が100時間を超える残業を続けているというのは、やはり正常とは言えないね。どういう仕事の内容か、どんな事業なのかがわからないので一概には言えないけど、こうした状況が放置し続けられているとすると、それは経営の責任でしょう。

 ただ、定時退社を認められているということだから、その点はまだ理解がある会社なのかもしれないね。咳喘息にもなって定時退社の要望も聞き入れられないような会社だったら、当然転職を考えるべきでしょう。

 だけど、どうやってモチベーションを維持したり、振る舞ったりすべきかということを悩んでいるようだから、そこまでこの会社のことを嫌ってはいないということかな。

大竹:咳喘息が治らないから、「無理してまで続ける必要はないのではないかと思う」という一方で、モチベーションの保ち方や社内での振る舞い方で、上田さんのアドバイスを求めています。

上田:そうだね。労働環境の改善は会社の責任だからちょっと脇に置いておいて、あなた自身の気持ちの持ち方を少し変えてみたらどうでしょうか。

大竹:どういうことですか?

上田:転職を考える際、その理由は今の会社が自分に向いてないという理由が多いでしょうが、あなたに限らず学校を出て会社に就職して間もない頃は、自分に向いている会社なんていうのはほとんどないと思った方がいいですよ。学生時代まではご両親や学校、また社会制度に保護、庇護されてきたわけです。いわば、自分を中心に周りが回っていたわけです。

大竹:以前、「天動説」「地動説」というお話をいただきました。(参照:ミスばかりする2年目女子は「天動説」を捨てよ

上田:そうそう。しかし、社会に出ると自分の思い通りには世の中は回ってくれません。天動説から地動説の世界に変わり、そこで戸惑って、つい「会社が悪い」と会社のせいにしてしまうわけです。

 確かに、残業時間があまりにも多いというのは異常な環境です。その点は、経営の責任としてすぐに是正してもらわなければいけません。一方、あなたは今、定時退社を認めてもらっているわけだから、その環境の中でどうやってチームに貢献するかを考えてみてください。

 そもそも、転職して成功する人というのは、それまで所属していた会社でのキャリアやスキルがちゃんと身に付いている人です。学生から社会人になったばかりで次の会社へ転職しても、何も身についていないから転職先の同年代の人に追いつくだけでも大変ですよ。結局、苦労をしてまた「この会社は自分に向いていない」というような状況に追い込まれてしまいかねないね。

 体調が悪くて定時退社しているあなたを、周囲がどのように思っているか、冷静に考えてみてください。「俺たちは残業までして働いているのに、なんであいつは」と思う人がいてもおかしくない。厳しいことをいうようだけど、それが職場の現実ですよ。