無視する上司も、実は意外と聞いている

大竹:若い頃は、上司が意見を聞き入れてくれないと不安に思って、気持ちも腐って、場合によっては辞めてしまうこともあります。

上田:だいたい課長、部長になるとキャリアを積んでいるわけですよ。何もせずに、そういうポジションに立てるわけじゃないからね、組織というものは。32歳の意見を上が聞いてくれないというのは、どの会社でもよくある話ですよ。

 上司も、いちいち部下が理解しやすいように根気よく説明をしてはくれないものだよ。だからといって、聞いてくれないなんて卑屈になる必要はない。実際には、上司は結構、聞いているのよ。

大竹:「何をお前、そんなこと言っているんだ」と言いながらも、実は言われたことを結構気にしていたりする。

上田:そう。僕の経験からしたって、伊藤忠時代に上司に何か意見をすると、「お前、そんなことを考える必要なんてないんだ。とにかく今日は、商談に行って来い」というようなことを、よく言われたものだ。商談に行って来いなんて言われたって、困るよな。こっちは何の武器も持っていないし、商談を進める際の指針も公式もない。上司が手取り足取り、こうやって来いなんてことはあり得なかった。

 それでも、言われた通り商談に行きながら、意見を無視されてもあきらめずに何度も言っていれば、意外と「あいつ、いい意見を言うな」と上司の記憶に残るものなんですよ。上司は笑いながら意見を聞かないような態度をしていても、あいつなかなかやる気があるな、あれはなかなか勇気があるなと、そんな印象を持つようになる。

 ただ、いいことを言っていても、今のポジションで仕事の成果を出していないと、その意見がかすんでしまうんだ。「そうは言っても、あいつはどれだけ仕事で成果を出しているのか」ということも、一方では見ているのよ。

大竹:むしろ、事業の責任を背負っている上司としては、今の成果の方が重要ですからね。

上田:うん。だから、それを乗り越えさえすれば、上司もあなたの意見に対して真剣に取り組んでくれるようになるよ。

大竹:30歳前後というのは、ある程度仕事もこなせるようになってきて、任される仕事も増えてきて、自信もついてきている頃ですよね。だからこそ、自分の意見を通せるようになれるかどうかの、ちょうど分かれ道ぐらいなんじゃないですか。

上田:そう。それにまた、意見を言いたがる年頃なんだよな。だからこそ、今やっている仕事に磨きを掛けつつ、そういう危機意識なり問題意識を持ち続けることができれば、必ずいつか、上司に評価されますよ。
大竹 上田さんには、そういうことを言いたがった時期はあったんですか。まあ、常に言っていたのではないかと、想像しますが。

上田:言う前に、自分でやっちゃったからね(笑)。

大竹:上司の許可も取らずに。

上田:それで怒られることも多かった。

大竹:これまでの話を聞いていると、上田さんの場合は普段から実績を積んでい+たから、意見も通る、というか意見を言う前に自分で行動してしまっても、ちょっと怒られるくらいで済んでいたのかもしれませんね。

上田:やっぱり結果を出していくことが大切なんだよ。今日よりも明日、今年よりも来年の方がいい仕事をしているというように、実績を積み上げていくわけよ。そうすると、上司も逆に、話が聞きたいと向こうから寄ってくるようになる。「上田、お前はどういう考えでやっているんだ」とか。そうなれば、逆にこっちも上司に対して言った意見が、汲み上げられるというケースが増えてくるわけだな。

 つまり、まず自分を磨いてみてください、それが1つの、今回の相談の答えであります。

 どんな大会社でも、何かの曲がり角や転機はあるものです。それに気付かないまま過ごしてしまうと、あっと思ったときには倒産なんていう大手企業もあるわけだから。

 だけど、そういうことに関しては、30歳そこそこでは、あまり頭を悩ませないほうがいい。今、自分が置かれている世界で、どれだけ強く結果を出せるか、そこに集中してみなさい。むしろ、30代で会社に頼った人生を考えてしまうことこそ、自分の可能性を狭めることになってしまうかもしれないぞ。