ユニー・ファミリーマートHD相談役、上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、大企業に勤める32歳男性の悩み。風通しの悪い組織で、会社の行く末が心配になり、上司に意見を言おうとしたが、笑って無視された。組織に活力を取り戻すにはどうするか。上田さんは、「危機感だけでは組織は変わらない。まずは目の前の仕事を磨け」と説く。
私は現在、いわゆる大企業と呼ばれる会社に勤務しています。近年の報道から、伝統ある企業でも一瞬にして業績が転落し、経営の根幹が揺らぐ事例を目の当たりにするにつけ、私が勤める会社もいつ何があるか分からないという危機感を募らせています。
むやみに心配をしているわけではなく、(どの日本企業にもあるかもしれませんが)社内の縦割り組織や、自社開発製品/企画の減少、情報の非共有など、社内に問題点や改善すべき点は多くあり、明日は我が身と思いながら、自分にできる提案を精一杯しているところです。
そんな中、直属の上司に会社の将来について意見交換をしたいと、軽いトーンで話したところ、「何を不安に思っているんだ」と一笑に付されてしまいました。他部署の上役で真剣に話を聞いてくれる人もいますが、私の周囲には危機感を持っている人は多くありません。不安はますます募るばかりです。
どうしたら会社の将来に対する危機感を共有し、硬直した組織に起因する狭い視野ではなく、立場に捉われないフラットな視点から、会社の将来を議論できるでしょうか?また、どうしたら、そのような空気をボトムアップで作ることができるでしょうか?
ヒントをいただけましたら幸いです。何卒よろしくお願い致します。
32歳 男性(会社員)
大竹剛(日経ビジネス 編集):確かに、ここ最近、かつてのエクセレント企業が一気に転落するケースが少なくありません。今回は、そんな状況に危機感を抱く、大企業に勤める32歳男性からの悩みです。自分の会社を振り返ると、組織が縦割りだったり、新製品が減っていたり。それで会社の将来を心配して上司に相談したら、一笑に付されてしまったとのこと。
この方は意識が高いですね。きっと、危機感のない上司に苛立っていることでしょう。そういえば、上田さんがファミリーマートに来たときも、セブンイレブンという強敵がいながら、社内には意外と危機感がなかったと聞いたことがあります。

上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):僕が17年前にファミリーマートに来たときとよく似ていると思うよ。ただ、当時のファミリーマートよりはこの方の会社はおそらく立派なんだろうな。上司が、「何を不満に思っているんだ」と言うくらいだから、きっといい会社なんだろう、世間的には。
大竹:当時のファミリーマートはどんな状況だったのですか。
上田:トップチェーンのものまねをしながら、今と比べると少ないながらも利益をきっちり出せるような会社ではあった。しかしながら、先々のことを考えると、僕は危機感を持ったんです。
ファミリーマートに2000年に来て、2002年に社長になった。ちょうど21世紀に入った頃だ。僕は社長になってこう言ったんです。「我々の会社はこれまで競争の緩やかな業種の中で、見よう見まねでこの程度の売上利益を出してきたわけだけれども、これからは激しい競争の時代に入っていく。コンビニ業界でも、2~3社を除いて脱落していく世界に突入していくんだ。そのとき、我々は勝ち残っていける企業なのか」とね。
僕は、こんな状態のままでは我々は全くノー、つまり勝ち残ってはいけないと感じたんですよ。従って、5つの構造改革を断行することにしたんです。業務改革、組織改革、意識改革、人事制度改革、そしてコスト改革。これらをしないと、10年先に存在していないという危機感を持ってね。
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