ユニー・ファミリーマートHD相談役、上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、39歳独身女性の悩み。母親から早く結婚しろ、孫の顔を見せろと急かされ、仕事は楽しいが子供だけでも生んだほうがいいのではと心が揺れる。上田さんは、「子供ほしさに好きでもない男と結婚してはダメだ」と喝を入れる。
悩み:「三十路も半ばを過ぎた頃から、親から早く結婚しろ、孫の顔を見せろとせっつかれていますが、仕事は楽しく、何の不自由も感じません。とにかく、子供だけでも生んだほうがいいのでしょうか」
東京の大手企業に就職し15年以上経ちました。地方に実家があり、両親とも既にリタイアしております。三十路も半ばを過ぎた頃から、両親から早く結婚しろ、孫の顔を見せろ、とせっつかれています。帰省するたびに両親が年老いていく様子を見ると、早く孫の顔を見せて喜ばせてあげたいとも思います。
ただ一方で、今の仕事は楽しく、日々満ち足りた生活をしております。家事全般も十分こなせ、何の不自由も感じていません。「子供を生みたい」とは思うのですが、だからといって結婚したいとはあまり感じていません。最悪、子供だけ生んで孫の顔を親に見せたいとも思っているのですが、シングルマザーになる覚悟も自信もありません。
一方で「子供を生むためだけに好きでもない人と結婚するのはどうか」「気乗りしない結婚をして親は喜ぶのか」とも疑問に感じております。出産はタイムリミットがある問題だけに、どうしたものかと悩んでおります。
上田さんのアドバイスをください!
39歳 女性(会社員)
大竹剛(日経ビジネス 編集):今回は、39歳の独身女性です。仕事が大好きで充実した日々を過ごしているようですね。けれども、実家に帰ったりすると、両親から結婚しろ、孫の顔を見せろ、と言われどうしたらよいのか悩んでいるようです。
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):まずね、この方は非常に素晴らしい。今働いている会社なり仕事なりが楽しくて、やりがいがあって、一生懸命やっている。素晴らしいよね。
ただし、その後がよくない。
大竹:その後が、と言うとどのあたりですか。
上田:親に孫の顔を見せたいし、自分も子供が欲しい。それでシングルマザーでもいい?その考えはとんでもないですよ。
子供はね、男と女が愛し合って恋をして、結婚をして、その結果として生まれるものだよ。もちろん、夫婦関係がぎくしゃくして、恋も冷めて、それで離婚してシングルマザーになるというのは、ありえるよ。だけどね、子供を作るために好きでもない男と結婚するというのは、とんでもない話。
大竹:とんでもない。
上田:喝を入れたい。カーツ!
僕は、この彼女のご両親の気持ちが良く分かるよ。親は、やっぱり自分の子供のことが心配なんだ。特に娘のことはね。東京へ出てきて、独りで頑張っている娘を、ご両親は誇りに思っているはずですよ。だけど将来、やっぱり幸せな家庭を持ってほしい、できれば子供も持ってほしいというのは、普通の親心ですよ。それで久々に会うと、つい、孫の顔を早く見せろと言ってしまう。でもそれは、言葉のあやというものなんだ。
大竹:あくまで言葉のあやであって、それは娘に対する親の愛の証だと。
上田:そう。僕も子供を持つ親だからね、それは分かる。
恋は、自分で行動しなければ寄ってこない
大竹:上田さんのお子さんは息子さんですよね……
上田:3人とも息子。ただ、この話は息子だろうが娘だろうが関係なくて、息子に対してだって早く結婚しろだとか、そういうことは言いますよ。「お前、老後はどうするんだ」とかね。仕事をやっているうちはいいかもしれないけれども、歳をとって退職して、プライベートの生活を独りで送るようになったときのことを想像すると、つい「いつ結婚するんだ」と言ってしまうものですよ。
大竹:3人の息子さんは、もうご結婚なさっているのですか。
上田:もう結婚はしているけど。まあ、息子の話はこの辺で終わりにしておきましょう(笑)。
大竹:お孫さんもいる?
上田:もう4人もいるよ。よちよちはいはいやっているよ(笑)。
まあそれはともかく、子供がいくつになっても親の心配が尽きないのは、人生の一つのありさまとして普通のことであって、親としては娘に「どうだい、いい男はいないのか」とか聞いてしまうものだよ。
ちゃんとバリバリ働いているし、しっかり生活もできているし、娘の「今」については何も心配していないと思うよ。だけど、親というのは、子供の一生を常に考えているものだからね。どうしてもその先々まで心配してしまうんだ。何も、シングルマザーでいいから孫の顔を見せろということを言っているんじゃない。仮にそうなったら、親はもっと心配するわね。
だがら、そんなあなたの考えを親がストレートに聞いてしまったら、親はとんでもないと怒って、もっと心配するようになってしまう。
大竹:そうでしょうね。
上田:だから、もうとにかくシングルマザーでもいいからとか、好きでもない人と結婚して子供を作ろうかとか、考えてはダメだ。
ちなみに、畠山みどりさんのことは、知っている?
大竹:畠山みどりさん?どなたでしょうか。
上田:演歌歌手ですよ。こんな歌があるんだ。
恋をしましょう 恋をして
浮いた浮いたで 暮しましょ
熱い涙も 流しましょ
昔の人は 言いました
恋はするほど 艶がでる
恋はするほど 艶がでる
(「恋は神代の昔から」 作詞:星野哲郎 作曲:市川昭介)
おい、しらけているのかね(笑)。
大竹:いや・・・・・・。なかなか、味のある歌ですね。上田さんは畠山みどりさんがお好きだったんですか。
上田:いや、ちょっと思い出した。
ようするにね。仕事で輝いているあなたのような30代の女性なら、恋もすれば人生はもっと輝く。恋をしましょう。そうすれば、あなたには必ず、赤い糸で結ばれた男が現れますよ。ただし、なんぼ小指と小指が赤い糸で結ばれている男性がいたとしても、自分で行動しなければ、その男性は見つけられません。
恋は、自分で行動しなければ寄ってこない。
だから、仕事の合間にもっともっと人を好きになりましょう。もっと人と出会える世界に出て行って、活動的に動いてみてはいかがですか。そうすると、あなたが好きになり、彼があなたを好きになりということが、必ず出てきます。まずは、仕事以外でいろいろな人とのお付き合いを広げてみて下さい。
大竹:仕事以外で、ですね。
上田:そう。いや、職場内でも結構ですよ。ただし、不倫はいけませんよ。
子供、子供と思い込んで無理をしてはいけない
大竹:不倫以外で(笑)。ただ、職場内だと、仕事ができる女性ほど、周りの男が物足りなく見えてしまうのではないですか。特に同年代とかに対しては。
上田:だから、もっと活動範囲を広げましょう。いろいろなサークルとか、研修サークルとか、あるいは趣味のサークルとか、そういったところに時間を割いていけば、そこで必ず、まあ、尊敬できる男と出会いますよ。行動しないうちには、常に自分の身近な世界の男しか見てないから。世界は広いんですよ。
そういうことで、今回僕が言いたいのは、子供を生むために好きでもない男と結婚するというのは、もってのほか。恋をしなさい。
恋をすれば、あなたが今やっている仕事にも、もっと艶と輝きが出てきますよ。
大竹:悩みの内容にもありますが、子供を早く産みたいというのは、出産適齢期についての心配もあるからのようですね。子供は産みたい、しかし、キャリアも中断したくない、そして適齢期のタイムリミットも迫る、という悩みもあるのではないでしょうか。
上田:だけど、この方は東京の大手企業にお勤めなんでしょう?出産休暇とか育児休暇は、全部そろっているはずですよ。例えば、『日経ビジネス』では出産したら退職させられるの?
大竹:そんなことないですよ。仕事と出産・育児を両立させている女性はいます。
上田:そうでしょう。今の企業経営においては、やっぱり育児休暇なり出産休暇なり、それはもう、ちゃんとした会社であれば全部制度がそろっているので、そういった心配はいらないと思うね。
出産適齢期が過ぎてしまうことを心配するのも分かりますよ。だからこそ、早く恋をしなさい。恋はすればするほど艶が出る。そんな恋なんか悠長にしていたら適齢期が終わってしまうと言われるかもしれないな。けれども、子供を生むことが優先なのかというと、そうじゃないでしょう。
相談者の彼女には、恋をして、子供を産み、育てて、しかも仕事もバリバリやることをぜひ、目指してほしいね。どうでもいいから子供が欲しいということは、これはもう、判断材料としてあり得ません。彼女の幸せのためにも、生まれてくる子供の幸せのためにも、恋をすることが大前提です。好きでもない人の子供を生むくらいなら、子供なしでもいいではないか。子供がいなくても、豊かな人生は送れますよ。
子供、子供と思い込んで、自分の人生、今の仕事を歪めるべきではないと思いますよ。それから親に対しても、後々、余計な心配をさらに掛けるようなことはすべきじゃない。
大竹:無理をしてはいけない。
上田:無理をしてはいけない。
25歳差の愛が実ることもある
大竹:ちなみに、最近の男と女の話題でいうと、フランスのマクロン新大統領(39歳)と妻のブリジットさん(64歳)は、かなりの年の差婚ですよね。
上田:そうだよね。ブリジットさんはマクロンさんが高校生の時の先生でしたっけ。年の差は25歳とか。
あれは赤い糸で結ばれておったんですよ。素敵な話じゃないですか。マクロンさんはやっぱり伴侶として常に教えてくれて、アドバイスや注意をしてくれるブリジットさんがよかったわけですね。それがたまたま、25歳離れておった女性だったと。しかも、略奪婚だとか。ブリジットさんは結婚しておったんでしょう。それでもマクロンさんが好きだ、好きだといって結婚した。結果どうだったか。お互いにきっと、ハッピーだったわけでしょう。
だから、相談してくれた彼女も、行動しなきゃ。
大竹:男も女も、恋愛は行動あるのみ、ですね。
上田:恋はすればするほど艶が出る、と(笑)。
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