好評連載中の上田準二・ユニーファミマHD相談役の「お悩み相談」。連載11回目は、偉い人たちが挙げる「座右の銘」に不信感を抱いている38歳男性(会社員)の悩み。定番の「人事を尽くして天命を待つ」を掲げる人たちは、はたして本心からそう思っているのか?上田さんが打ち明ける「座右の銘」の知られざる真実。

悩み:「人事を尽くして天命を待つ」を座右の銘に挙げる上司を信用できません

先日、社内報に掲載された上司の「座右の銘」にシラケました。著名経営者も含め、なぜ、偉くなると「人事を尽くして天命を待つ」という座右の銘を挙げる人が多いのでしょうか。そもそも、本当に皆、「座右の銘」を持っているのでしょか。

38歳 男性(会社員)

大竹剛(日経ビジネス 編集):新聞や雑誌のインタビュー記事では、プロフィール欄に「座右の銘」を書くことが確かに少なくありません。社内報の役員の紹介にも、「座右の銘」が載っているのをよく目にします。特に頻繁に見かけるのが、今回の相談者も指摘する「人事を尽くして天命を待つ」ですね。

 デジタル大辞林によれば「力のあらん限りを尽くして、あとは静かに天命に任せる 」という意味のようです。もはや、会社役員にとって座右の銘の定番ですが、相談者は、あまりに多くの人がこの言葉を座右の銘に挙げているので、「本当にそう思っているのか?」「適当に言っているだけではないのか?」と疑っているのでしょう。

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)

上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス取締役相談役):「人事を尽くして天命を待つ」を座右の銘に挙げる人を「信用できません」とまでは僕は言わないよ。けれど、そういうことを立派な方々が自分の座右の銘ですと紹介しても、周りの人がその人を尊敬するようになることはないよね。

大竹:尊敬しない?

上田:うん。僕が思うに、「人事を尽くして天命を待つ」を座右の銘に挙げるような人は、それまでそういうことをしてこなかった人なのではないかと思うんですよ。

 たまたま流れの中で、座右の銘を聞かれるような立場や地位になって、自分の人生を振り返ってみたら、自分は「人事を尽くして天命を待つ」じゃなくて、たまたま運でそうなっていた。だから、ある意味で自戒の念を込めて、「人事を尽くして天命を待つ」と言っているのではないかな。

大竹:自戒の念を込めて、ですか。

上田:会社の社長や役員になると、その先の会社人生はそれほどもう、長くはない。だから、最大限努力して、結果は後の人に評価してもらう、そういう気持ちになるものなんですよ。「人事を尽くして天命を待つ」という言葉は、これまでそういうことをあまり意識してこなかった人が使う言葉なんです。だから、そういうことを言う人を信用する、しないじゃなくて、本人がそうありたいと、そういう立場に立って初めて自覚したんだなと思って聞いてやってください。

大竹:なるほど。上に立つ者としての心構えに、初めて気付いたと。

上田:そう。僕はそのように見ています。偉くなって初めて自覚しました、頑張ります、という決意表明なんです。