あなたが男なら、料理の前にまず釣りを始めよう

大竹:ある意味、上田さんの料理を巡る経験は極めて特殊で、あまり普通の男性には参考にならなそうです。この相談者の方も、そもそも料理をしたことがあまりなく、包丁すらまともに握ったことがないようです。そういう方はどうしたらよいのでしょうか。

上田:つまり、うちの女房のことを考えてみたらいいんだよ。うちの女房は、包丁をまともに握れませんでした。それで、魚なんかを触るのも嫌がっていました。ウロコを取れと言ったときなんて、手がおろおろしちゃうほど、嫌いだった。

 それでも、今や私との経緯を知らない隣近所のおばさんたちから見ると、女房は料理上手な奥様と呼ばれている。それで今や料理の腕前を自慢しているんですよ。「市場で魚を1本買ってきて、私がさばいたのよ」なんて言って。これがまた、本当にすし屋で出てきたみたいに、きれいにさばいているんだよ。それが、結婚当初、まったく包丁も握れず、魚も触れなかった女ですよ。

 だから、誰だって料理はできるようになるんです。まして、相談者は男性でしょう。

大竹:男性の方が、有利なんですか。

上田:そりゃそうですよ。料理を趣味にできますから。しかも、料理するだけではなく、その前のプロセスから全てを趣味にできます。例えば、一番手っ取り早く料理を好きになるには、釣りを始めることです。

大竹:釣りですか!確かに、私も釣りをやりますけど、釣りをやったら自分でさばくことになりますものね。妻に「さばいて」とはお願いできない。

上田:そう。そうなんです。必然的に、自分で包丁を持ち、台所に立つことになるんですよ。

 それで、釣った魚の食べ方、さばき方が分からなければ、船宿で全部、船長なり船宿のおかみさんに聞くしかない。もしくは、その場で実演してもらって、さばき方を見せてもらう。ちょっと1匹、さばき方を見せてくださいと言ったら、みんな、喜んで教えてくれるから。

 それで自宅へ戻ったら、まさに覚えてきたさばき方を、自分でやってみるわけです。最近では、インターネットで魚のさばき方を探せば、動画で出てくる。そういうのも活用しながら、まず自分でやってみるんです。考えているだけではダメで、まず自分で包丁を買って来て、試してみる。

 でも、奥さんが使っている包丁を使ってはダメだよ。

マイ包丁は最低3種類、ついでにマイ砥石も購入すべし

大竹:違うのを買わないといけない?

上田:うん。マイ包丁をまず買う。自分の包丁を買ったら、もう趣味の域に入ったも同然だから。買うのはまずは、出刃、さばき包丁、刺し身包丁、最低この3つだな。

大竹:いきなり3本ですか。

上田:それだけ買えば、もう逃げられない。

大竹:中途半端に1本とかだとダメですか。

上田:ダメダメ。そんなのすぐやめちゃうから。出刃、さばき包丁、刺し身包丁。この3つは絶対だ。本当は10本はほしいところなんだ。

大竹:ちなみに、上田さんはマイ包丁を何本持っているのですか。

上田:僕は今48本になった。まあ、使ってないのが20本ぐらいあるけどね。

大竹:でも残りの28本は使うんですね。

上田:ええ。それについでに砥石も買っておいてください。これも、荒研ぎと中研ぎは必要だ。

大竹:仕上げ用はいりませんか。

上田:仕上げもあった方がいいね。砥石も3種類だね。週末に包丁を研ぐこと自体が、精神修行、精神の安定につながるから。

大竹:釣りに行かなくても、週末は包丁を研ぐ。

上田:ええ。そうすると奥さんにも迷惑はかからない。最近は、「夫源病」なんて言葉があるでしょう。夫の言動や態度が原因で、奥さんが病気になるというやつだ。だいたい、夫源病は、奥さんに構ってほしくて夫がいろいろ騒ぐことが原因でしょう。包丁を静かに研いでいれば、奥さんに迷惑はかからない。ただ、不気味に思われるかもしれないけどね。深刻そうな顔をしてひたすら包丁を研いでいたら(笑)。

大竹:確かに、それまで趣味を持たず仕事人間だった夫が、いきなり包丁を研ぎ始めたら気味が悪い……。

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