好評連載中の上田準二・ユニーファミマHD相談役の「お悩み相談」。連載10回目は、定年後を意識し始めた59歳の男性(会社員)の悩み。妻との関係が冷え切る中、「男の料理」で起死回生を狙いたいものの、これまで包丁すらまともに握ったことがない。48本のマイ包丁を持つという上田さんからのアドバイスは?

悩み:定年後に「男の料理」を趣味にしようと考えていますが、何から手を付けていいの分かりません

定年が近づいています。家にいる時間が長くなってきましたが、完全に居場所がないことに気が付きました。流行の「男の料理」でも始めて、妻との関係を改善するきっかけにしたいと考えてみたものの、これまでの人生、包丁すらまともに握ったことがありません。定年後、そんな私に妻から三行半を突きつけられないか、心配です。

59歳 男性(会社員)

大竹剛(日経ビジネス 編集):今回は、定年後に料理を趣味にしたいという男性からの相談です。細かいことは分かりませんが、包丁すらまともに握ったことがないというのは、おそらく、あまり家庭を省みることなく、がむしゃらに会社のために働いてきた男性なのかもしれませんね。

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)

上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス取締役相談役):私に比べたらまだまだ若いじゃん。これまで包丁を握ったことがなくても、料理ぐらいできるようになりますよ。安心してください。

大竹:ただ、料理はともかく、家に自分の居場所がない、妻から三行半を突きつけられそう、という典型的な熟年離婚の危機に直面しているという自己評価も気になります。

上田:まあ、そうなんだけど、どうやったら料理ができるようになるかを相談してきているから、今回はそこから答えるよ。まずは、いつものように僕の経験から。

 僕の場合、料理は小学校のときからやっていたんだ。あれは料理といえるようなものじゃなくて、飯を食わにゃいかんという、背に腹は代えられない事情でしたよ。おふくろは町の理髪店をやっていて、おやじは外で運送会社に勤めていて、わずかながら自給自足の小さな田んぼも持っておったんだ。

 つまり、おふくろは髪を切り、おやじはトラックを運転しながら、田んぼ仕事もやっていた。今流行の共働きで、しかも副業をしていて忙しかったわけ。

 そうすると、夕方の食事や翌朝の食事について、誰がおかずを買いに行くのかというのが、家族の大問題だった。毎日の献立をどうするのかと。おふくろは割烹着を着て散髪屋をやっておったけど、その散髪の格好をしたままお客を放ったらかしにして魚屋なんかに買い物に行けないでしょう。おやじはトラックの仕事だから、そもそも無理だ。

 そうすると、兄弟4人でだいたい親の手伝いを分担することになる。まず、土間掃除、それから板の間のふき掃除、あと風呂桶の掃除と水張り。これが大変なんだよ、井戸で水を汲んできて、風呂桶いっぱいにしなくちゃいけない。あとは皿洗いと、献立を決めて食材の買い物。

 その中で、僕は井戸の水汲みとか土間の掃き掃除だとかは面倒くさいなと思ってやりたくなかった。だけど、あとの兄弟3人は、逆にみんな外に行くのが恥ずかしいと、買い物を嫌がったんだ。だから、献立作りと買い物は僕の担当になったというわけだ。

大竹:兄弟はどういう構成だったんですか。

上田:長男と僕、そして妹と弟。

大竹:それぞれ何歳ぐらい違うんですか。

上田:3つずつ。ぴったりね。

 それで、じゃあ僕が買い物に行くといって、家族全員分、魚を買ってくることになる。そうしたら次の日は、もう魚はいいから、肉屋と八百屋に行って、肉と何か野菜を買ってくる。もらうお金はだいたいいつも同じ。これで本当にみんなの分を買えるのかという金額だった(笑)。

大竹:そこまで自分で考えてやらなきゃいけなかったんですね。