大竹:なるほど。自分を除いて、みんながアホだと思っているのは、ありそうですね。そんな人が集まってしまったから、ますます停滞してしまう。

上田:うん。このチームは、全員が自分を除いて周りはアホだと思っているチームじゃないのかなと思うね。課長も、俺の部下はアホばっかりだと、きっと思っているよ。よく聞くじゃないですか。「何で私の課には、こんな会社の役に立たないやつばかりが来るんだ」という不満を。この不人気な課長も、きっとそう思っているかもしれない。

大竹:そういう相手の立場になって、その人がどのように周囲を見ているのかを想像してみるというのは、確かに重要ですね。

上田:ええ。自分を除いては全員そう思っている集団かもしれない。だとしたら、それは実は、彼にとってはチャンスなのよ。

大竹:チャンスなんですか?

“アホ集団”の中でこそ目立てる

上田:うん。おそらく、そういう部署の人は、先を読む力を発揮できていなくて、新たな商品や新たな販路というものを真剣に考えていない。今までの延長線上の商品と販路で、売れた、売れない、値段が高い、安い、いや、もう商品企画が古いだとか、そういうことばかり言っていて、何を新たに作っていこうかという議論をしてないのではないかな。部署を束ねる課長も、それを引き出せていない。であれば、彼にとってはチャンスだよね。こういう“アホ集団”でこそ、チャンスを得られるんですよ。周りがみんな賢くて、論理的で、仕事ができる人ばかりがいる集団だったら、少々優秀なくらいでは埋もれてしまうよ。難しいことにチャレンジして成長する機会だって、十分に得られるかも分からない。

大竹:ようするに、目立てない。

上田:そう。ここはもう、ここで花を開かせれば、次のステップアップの役職なり組織なりに移れると考えるべきだね。5000人以上も社員がいる大企業なら、いろいろな組織があるはずなんでね。

大竹:ですが上田さん。相談の内容から想像すると、もう既にこの方は、いろいろと上司に提案してきたのかもしれませんよ。それで受け入れられなかったからこそ、ここまで憤慨しているのではないですか。

上田:結局それは、自分の自己評価と周囲からの評価が合ってないから、提案が受け入れられないんですよ。自分はいろいろ提案したつもりでも、全然評価してくれない、取り上げてくれないということは、自分は自分の提案が一番優れていると思っているけれども、周りから見たらそうじゃないんですよね。

 どんな組織でも、ある人が提案すると、それで組織が動くというような場合がよくある。その人がどういうことをやっているのかというと、課のミーティングなどでいきなりポーンと突拍子もなく提案したりはしないんです。一度のミーティングで、自分がやりたいことをすぐに理解してもらうのは、なかなか難しいからね。提案を受ける側の理解力の問題もあるけれども。

 従って、正式な提案をする前に、同僚、あるいは課長にも、私はこういうことで販路開拓をしたい、商品企画をしたい、それがこのグループの組織の運営にこういう理由で寄与し、その結果、この組織はこんなふうに強くなれるんじゃないでしょうかと、考えを披露してみる。

大竹:つまりは「根回し」ですね。

上田:最初にいろいろ準備、根回しをしておく。そうしておけば、いざミーティング、会議のときにおいては、それは初めて聞く話じゃないので、周りの人の理解度も増す。そのときに、定性面、定量面をおさえたきっちりとしたプレゼン資料に基づいて、しっかりと説明する。そうすると、お前、なかなかやるじゃないかと、きっとなるよ。自分からは全く提案を出さない課長も、彼の話を聞いて、それでいこうと。ぐうたらな課長もそういう案を聞いて理解すれば、その上の部長に、「私の課では、こういうことをやっていきます」と胸を張って言えるようになる。それは課長にとっても、ちょっといい話でしょう。そのきっかけを、作るんですよ。

大竹:自分がやりたいことが、課長のため、部長のためになるような話の持って行き方をするんですね。

上田:そう。それをやれるチャンスが、彼にあるわけだよね。彼が言う通り、本当に周りがアホであれば。