ユニー・ファミマHD相談役、上田準二さんの「お悩み相談」。今回は米国に本部がある国際機関で働く52歳の女性から。地球規模の仕事でやりがいはあるが上司の理不尽に耐えられない。上田さんが「日本に帰っておいで」と優しく背中を押す。
悩み:米国に本部がある国際機関に10年近く勤めていますが、理不尽な米国人の上司に耐えられません。地球規模の仕事でやりがいはありますが、上司の悪意に耐えられず、早く日本に帰りたいという思いもあります。どうしたらいいでしょうか。
米国に本部のある国際機関にテクニカルスペシャリストとして10年近く勤めていますが、米国人マネジャーの悪意に悩まされています。当ユニットの予算が少なくなったせいで、私がどういう仕事をするか洗いざらいチェックし、「この仕事はやめろ」「こんなに予算を使うな」と、細かく指図されます。私が業務の重要性や意義を強調しても、「予算」だけで議論が進みます。挙句にはミーティングの後に、「ミーティングの準備が全くできていなかった状態に失望した」という文面のメールが来ました。予算について話すという予定では全くなかったため、私は別の準備をしていました。おそらく「失望した」というメールを、あちこちでばらまいて私が無能だと宣伝しているのでしょう。
そのマネジャーは、私の人事評価関連の書面についても虚偽の内容を書いたことが何回かあります。職員組合にも相談していますが、お手上げです。地球規模で意義のある仕事をしていると思いたいのですが、マネジャーの嘘、不信感で日常は混乱しており、同僚も同様の目にあっています。
前例がないものの、職員に怒鳴ることで悪名高いこのマネジャーが放逐されるという噂もあります。しかし、実現するかは不明です。マネジャーは私より年長ですが、私より国際機関にいる年数はずっと短く、上長から「結果を出せ」と言われているものの出せていない状態です。どうすればいいのでしょうか。定年になって日本に帰りたいです。
(52歳 女性 公務員)
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)
大竹剛(日経ビジネス 編集):今回は、これまでにない相談です。いよいよ、このコラムもグローバルになってきました。米国で地球規模の意義のある仕事をされている女性からです。きっと世界を救うようなお仕事をされているのに、職場では上司のパワハラに悩まされています。こういう上司の嫌がらせは、世界中どこにでもあるんですね。
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役): 公務員と書いてあるね。国連とか、そういう国際機関の関連なんだろうか。
大竹:グローバルにやりがいのあるお仕事をされているのに、理不尽な上司の振る舞いにどうしたらよいかわからず、早く定年になって日本に帰りたいとまで言っています。
上田:まず、この彼女以外にも、同じような嫌な思いをしている人は組織の中にいるんでしょうね。だから1つ、このマネジャーは上長としては全く信用できないということを、いろいろな事例を挙げながら書面に書いて、同じような被害にあっている人との連名で正式に職員組合、ならびにさらに上の上長に提出してはどうでしょうか。それで状況が変わるのであれば、まだここにいたらいいけれども。何で先にそういうことを言ったかというと、今回の僕の結論は、「早く日本にお帰り」だ(笑)。まあ、帰ってこいと言ったら、相談が終わっちゃうか。
どこでも働けるのなら、嫌な職場で働き続ける必要はない
大竹:仕事はたぶん、すごくやりがいがあるようですね。意義のある仕事と、ご自身でも強調していますから。
上田:そうだね。職員組合にちょっと相談しているのは、心の底ではこの意義のある仕事を続けたいという気持ちがあるからでしょう。もし、その気持ちが本当に強いのなら、仲間を募って、この上長はおかしいということを、組織に正式に訴えた方がいい。
だけど、彼女は一方で日本に帰りたいということは、この上長がいる限りにおいては、もう仕事を続けたくないとも思っている。
大竹:やりがいの面から言えば続けたいけれども、このマネジャーがいる限りは続けたくない。なかなか、煮え切らないですね。
上田:この引き裂かれる気持ちを一気に解決するためには、やはり職員組合やこのマネジャーより上の上長に文書で訴えるしかないよ。できれば、同じ思いをしている人が連名で。
まあ、実は周りもそう思っていると言いながら、被害にあっているのが自分1人だけだと、立場が弱くなってしまうが・・・・・・。
大竹:たぶん、そうではないんでしょう。「悪名高い」と言っていますから。
上田:悪名高いと言うんだったら、やっぱりそれは戦わなければ。まず戦う。だけど、その組織全体がそういう声を聞き入れないようなところだとしたら、これだけのキャリアがあるわけですから、人材バンクにでも登録しておけば、日本に戻ってきてもいろいろな会社、あるいは公的機関で働き口はあると思うよ。
国際機関といっているから、日本にも支部があるんじゃないのかね。そうしたらそこに応募するとか。
大竹:やっぱり国際機関でも日本の組織と同じようにこういう話はよくあるということなんですかね。
上田:そうだろうな。
大竹:もう、早く日本に帰っておいでということですね。
上田:まあ、マネジャーの立場としては、予算は決まっているんだから予算の中でやってくれよとか、そっちには予算を割けないとか、言い分というのはあるのだろうけどね。
だから、周りの人も似たような被害を受けているのか、それともあなただけなのか、とりあえずは周りの人の状況も見て、客観的に判断してみる必要はあるでしょう。もし周りも同じであれば、連名で訴える。一方、周りの人を誘ってもノーと言われ、あなただけしかいないのなら、そう思い込んでしまっている可能性がある。
その場合は、なかなか解決することが難しいかもしれない。それでも、職員組合と上長の両方に書面を出してみる。それでも受け入れられなかったら、日本へお戻り(笑)。
大竹:「定年になって日本に帰りたい」ということは、定年になるまでもう少し働いていたい、という思いもあります。
上田:まだ52歳でしょう。こういう仕事は70歳になっても、80歳になっても、心身ともに健康であれば、きっとやっていけますよ。52歳ということは、まだ20年はやれるんだから。
大竹:そうですね。
上田:そうすると、これから先の20年という期間をどこで働くかといったら、やっぱり1回日本に戻って、自分が経験したことを生かせる機関なり、会社なりに行った方が自分の将来にとって豊かな人生を送れると思うけどね。
だけどその前に、このマネジャーを辞めさせることができるか、本気で試してみて下さい。世界中、どこでも働けるあなたにとって、ためらうことは何もないはずですよ。
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