おふくろの散髪屋で『オール讀物』などを読み漁る

大竹:あはは、やっぱりケンカ腰じゃないですか。それに対する面接官の言葉はなかったんですか。

上田:面接会場には、一瞬、いやな沈黙がありましたよ。それで人事担当が、「それでは皆さんの面接は終わりました」と言って、お開きになった。で、人事担当が何やらコメントを書いていた。おそらく彼は、その僕の発言を評価したんじゃないかと思うんですよ。

大竹:とんでもないやつだというより、むしろ評価されと?

上田:やっぱり東北人というのは、一味違うぞと。

大竹:ポジティブだなぁ・・・。そもそも本好きになったのは、やはり東北の田舎にはあまり娯楽がなかったからですか。

上田:もちろんそうですよ。本を読まないと、あり余る時間をつぶせない。最近は東北地方も近代化しているけど、僕が子供の頃は冬なんて何もできないんだから。

大竹:外に行くのも寒いですしね。

上田:寒いときは、ぼーっとしている時間が長かったんですけど、ぼーっとし続けられないほど時間がある。

大竹:本との出会いは、最初はどんなジャンルだったんですか。

上田:まず小学校のときですね。だいたい児童文学ですよ。その中で、宇宙探検だとか、地底探検だとか、何かいっぱい読みましたけど、本の名前はあんまり記憶していないね。自分の勉強のために読んでいたわけではないですから。

 それと、うちのおふくろは町の散髪屋だったわけですよ。

大竹:確かに、床屋さんに行くと、必ず本がたくさんある。

上田:あるでしょう、『オール讀物』とか『文藝春秋』とかね。週刊誌もあるでしょう、いろいろと。そういう雑誌の中で、やはり小説をよく読んでいた。柴田錬三郎とか今東光とか。学校の図書館にある本も読んだけど、小学校の図書館にある本なんていうのはすぐに読んじゃったから、小学校6年までに持ちませんよ。

大竹:全部読んじゃったんですか。私なんか歴史マンガくらいしか記憶にないですが。

上田:そもそも、そんなにいっぱい本がなかったんです。町の公民館の本を借りたりね。だけど、自分は義務で読んでいたわけじゃない。読書が嫌いだというこの大学生も、義務で読んでいるような感じがするので、義務で読む必要はないんだということを伝えたい。やはり本を読むのは幸せな時間なんだと。じゃあ、まず手始めにどういう本から読むのか。とにかく、何でもいいから自分が読みたいと思った本から手を付ける。そうすれば、次第にさらに読みたい、読まねばいけないと思える本に出会えるんです。