就職に有利ということで、経済学部に入りました。正直、読書は嫌いです。でも将来のために小説なども含めて、名著を読んでおけと、大学の先生や偉い経営者は言っているようです。何を読めばいいのですか。そもそも本当に役に立つのですか?
19歳 女性(大学生)

大竹剛(日経ビジネス編集):上田さんはこの前、営業マンは小説を読んで妄想力を鍛えろと話してましたね(営業に効く「妄想力」は小説の悪役に学ぶといい)。読書はビジネスに役に立つということでしたが、この19歳の大学生は、そんな見方に戸惑っているようです。良い会社に就職するために読書をしておいたほうがいいと分かりつつ、読書嫌いどころか、本を読むことの意義そのものに疑問を抱いています。いわゆる、若者の活字離れなんでしょうかねぇ。
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス取締役相談役):この方は本を読めと言われて、読書が嫌いだというけれど、学問書だとかビジネス書だとか、そういう本のことを言っているんじゃないかな。経済学部というから、経済学の本を読めだとか。
しかし、この前も話したように、本を読むというのは自分自身を本の登場人物に投影して、あれこれ架空の人生を妄想することなんですよ。もちろん、私はこういう立場におりますから、いろいろな経済誌や情報誌、経営書の類も読みますよ。だけど僕は、『日経ビジネス』を読むようなことは読書だとは思っていません。読書というのは、自分が好きなジャンルの本、とにかく読むのが楽しいというようなジャンルの本を読むことです。『少年ジャンプ』のようなマンガだっていいんですよ。
大竹:日経ビジネスは読書じゃないなんて、そんなことはないでしょう!好きで読んでくださっている読者もたくさんいます。
上田:まあ、日経ビジネスを心から好きだというのなら、それも読書でしょう。読書が好きになる第一歩は、何でもいいから好きなジャンルの本を読んで、まず、なんでもいいから読書の癖を付ける。だから、経営者のストーリーが好きだというのなら、それが日経ビジネスでも構わない。そうすれば、そこから学問書を読んでみようかなとか、他のジャンルの本も読んでみようかなと広がってくる。本を読んだら自分の栄養になるのに、もともと読むのが嫌いだと言って遠ざけてしまったら、社会に出たらハンディキャップになるよ。
特にこういった作者だとか、こういった文学書だとか、こういった小説を読まなくちゃいけないということはなくて、まず初めに直木賞作家ぐらいの本から始めたらどうかな。芥川賞受賞作を読めなんて言うと、また嫌いになってしまいかねないからね。まずは、直木賞作家の本をとりあえず続けて読んでみるとか、そうやって読書の幅を広げていくんだよ。
大竹:純文学の芥川賞より、大衆文芸作品の直木賞のほうがとっつきやすいということですね。
上田:あと、気に入ったタイトルの本を読んでみる、というのもいいよ。例えば僕はこれまで、五木寛之さんの本はあんまり読んだことがなかったんですけど、『元気』というタイトルの本を見つけんです。タイトルがいいじゃないですか。僕はいつも「元気、勇気、夢」が大事だと言っていますが、五木さんも同じことを言っていた。
大竹:いやいや、単なる偶然だと思いますが…。
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