コンビニ大手ファミリーマートで発揮した優れた経営手腕のみならず、料理、読書、麻雀、釣り、ゴルフと、多彩な趣味を持つ上田準二さん。ユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長を退任し、取締役相談役となった今だから語れる秘蔵の経験や体験を基に、上田さんが若者からシニアまで、どんな悩みにも答えます。上田さんの波乱万丈の人生を聞けば、誰もがきっと“元気”になる。連載5回目は、同じ職場の女性に恋してしまった、妻子ある33歳男性の相談です。
悩み:妻子ある身にもかかわらず、同じ部署の女性に恋をした
同じ課の女性社員のことが好きになってしまいました。けれど私は妻子ある身。このままでは仕事にも支障が出てしまいます。どのように自分の気持ちと向き合えばいいのでしょうか。
33歳 男性(会社員)
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)
大竹剛(日経ビジネス編集):この男性、不倫の一歩手前、と言うことでしょうか。片想いをしているのか、それとも、付き合い始めているのか定かではありませんが、この33歳男性の悩み、恋愛経験も豊富そうな上田さんはどう受け止めますか。
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス取締役相談役):まず、仕事を一生懸命やっとらんな。
大竹:恋する前に仕事をしろというわけですか。さすが経営者的な視点です。
上田:だって、この恋愛は、会社の外での話じゃなくて、社内恋愛の話でしょう。
大竹:はい、社内の色恋沙汰です。
上田:ね。それなら、今置かれた自分の職場で、きっちり仕事で自分の花を咲かせ輝かせるのが先決ですよ。そのときに女性が好きだ、しかも自分には妻子がいるなんて、とんでもないね。
大竹:こんな悩み、あり得ない?
上田:あり得ない。と言ったら答えにもならない(笑)。
恋する気持ちはだれにも止められないけれど・・・
大竹:まず、そんな気持ちになること自体が、ちょっとお前、仕事してないんじゃないかと。
上田:ええ。まず最初にそう言いたいけれども、だけどそうなっちゃったと言うのだから仕方がない。恋する気持ちは、誰にも止められないからね。
そうなっちゃったというのであれば、まず仕事は手に付かなくなるね。それで、その好きになった女性とも、結局、うまくいかなくなると断言できる。どっちもうまくいくはずがない。
その女性を好きになったといいますが、彼女はどれくらいこの男性のことが好きなのか、それはこの質問の内容からはよく分からないけれども、この男性がまずやるべきことは、この女性が妻子ある男と付き合い、離婚まで迫って一緒になりたいということなのか、それともこの男性に対する興味でお付き合いしているのか、これを見極めるんですよ。
大竹:どうやって見極めるんですか。
上田:もうはっきり言うしかない。「僕はあなたが好きです。だけど妻子がありますので」と。そこまで言ったら分かるよね。「結婚する気はないけど、あなたと付き合いたい」と言うんですよ。そこで彼女がどう応じるか。
大竹:かなりの直球ですね。なかなか言いにくい。
上田:うん。でもそこは直球で見極めなさい。それで、「そんなのイヤ、あなたとどこまでも行きます。妻子と離婚して」と言うのであれば、男ならばそこで決断すべきでしょう。妻子ともうまくやりながら、それでその女性とも付き合いたいというのは、これは女性に無礼ですよ。
だからはっきり、「妻子があります、あなたが好きです。だけど一緒に家庭を持ちたいという気持ちはありません」と言う。それでもこの女性が「結婚する気がある」と言うんだったら、それでこのお付き合いをあきらめるか、もしくは、もう奥さんにはっきり言って離婚するしかないよね。
大竹:「妻子があります。でもあなたが好きです」だなんて、自分勝手な発言ですよ。そういった瞬間、普通相手は激怒するのではないですか。
上田:そうでしょう。でも、そもそも多くの場合、職場内の恋愛で舞い上がっている男というのは、女性から「ああ、ちょっとあの人、かっこいいわ」と5人くらいいる恋愛候補の中の1人に選ばれている程度なので、基本的に男の都合いいようにはいきませんよ。仕事もうまくいって、好きになった女性とも深いお付き合いをしたいなんて、世間はそんな甘いもんじゃありません。仕事上の人間関係も異性関係も、そんなふうにはいきません。
ただし、あなたも彼女も、死ぬまで一緒というんだったら、今度は奥さんの方にはっきりと言うことです。
思いを断ち切るために仕事に没頭する
大竹:いずれにせよ、早めに決断を出した方がいいということですね。ずるずるいくと、仕事も恋も両方ダメになる。
上田:そうです。仕事もできなくなると、そのうち彼女の方から愛想をつかされますよ。会社で仕事がまともにできない男と、いつまでも付き合いたいと思いますか?相手の立場、経営者っぽく言えばステークホルダーの立場をしっかり考えれば、分かりますよね。
大竹:それだけはっきり男女関係の行方を見通せるということは、上田さんはモテたのですか。
上田:いや、最初は田舎者だったので、女性との付き合いはありません。しかし、周りの男女はいろいろ合同ハイキングだとか海水浴、スキーに行っていましたが、実は一方で僕も大変だったんですよ、やっぱり。一生懸命仕事をやっていると、いろいろな異性との接点も出てきますよね。
大竹:職場の女性を好きになってしまったとか。
上田:いやいや、僕はだって家内と結婚して子供も生まれていましたから。
大竹:何歳で結婚したんですか。
上田:27歳で結婚しましたね。それでも、やっぱり若い頃は、かわいい女性がいたら目移りするよね。たまたま、「上田さん、飲みに行きましょう、上田さん好きですよ」なんて誘われると。
でも、それが何だと言うんだ。その女性が僕の好みのタイプだったとしても、女房、子供へのコミットメント(「コミットなきイケメン男とは、今すぐ別れなさい」)、この枠を踏み外すようなことは絶対にしない。
大竹:そんなに意志が強いんですか、上田さんは。
上田:別に、気張ってやっているわけじゃないけどね。
大竹:さすが、東北育ち(「東京者は、恋愛も仕事も刹那的だ」)。とはいえ、なかなか思いを断ち切れないケースも多いと思いますが。それが男というものでしょう?
上田:そういう時こそ、仕事に没頭するんですよ。
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