大竹:長いですね、3年って。
上田:3年は長いですよ。
大竹:今でいうとパワハラみたいな感じですかね。
上田:だってその部長が転勤するまで続いたんだから(笑)。
ただね、その部長が異動になって、新しい部長が僕に変なことを言うんです。「上田君、君はえらく前の部長に評価されていたんだね」と。僕はずっと、前の部長を「あのやろう」なんて思っていたから、意外でした。どういうことかと言うと、課長の方針で課は動いているはずなのに、部長が課長ではなく僕に直接話を聞こうとしていたのは、それだけ部長が僕を見ていたということだと。
だから、この28歳男性にもこう言いたい。この部長も、あなたを見ているんだと。見ているということは、期待しているということなんだと。
大竹:なるほど。そういう考え方もあるんですね。
上田:僕も最初は「そんなの課長に言えばいいじゃないか。何で俺に。これは課長の責任だろう」という気持ちが消えなかったけど、後任の部長にそう言われて、待てよ、と思い直したわけ。課長を飛び越えてまで自分に言うということは、課長に言うより僕に言った方があの部長は落ち着くし、うまくいくと思っているんだなと。課長が何でそういうふうに自分で説明しないんだとイライラするより、課長は課長で、自分が説明するよりも、僕から直接、部長に言ってもらった方が話が通りやすいんだなと、思い直したんです。
部長も課長も、この28歳男性のこと信頼しているんですよ。そう思ってやってみてください。理不尽なことを言われるたびに「あ、俺を見ているんだと。ということは期待しているんだ」とね。営業上の失敗やマイナスがあっても、課長ではなく自分に聞くのであれば、再チャレンジで期待をかけてくれているとね。
大竹:3年間はどうやって耐えたんですか。怒られ役だったんですよね。
上田:それは秋田出身者だから、これが私の役割だと思ってじっと耐えた。怒られるのも、私がいただいている給料の一部だ、これも仕事だとね。どうせ、誰かがやられるんだから、それを自分が受けているだけだと。怒られても、命までは取られない。腕を切れだとか足を切り落とすなんていうなら、これはとんでもない、抵抗しなきゃいけないけど、そうじゃない。そういうのは仕事じゃなくて処罰になっちゃうからね。
大竹:最近はそういうのは「パワハラ」というんですよ。命までは取られなくても、心を病んでしまう人も少なくありません。理不尽なことが続くと、普通は耐えられなくなります。
上田:もちろん、パワハラはダメです。絶対にダメです。どうしても理不尽で会社の体質も改善されないのなら、辞めるというのも選択肢です。でも、自分が落ち込んでしまって後ろ向きな発想になってしまうと、転職してもうまくいかないかもしれない。僕もこんなことを言っているけど、実はうつ病状態になったときもありましたよ。
大竹:そうですか。上田さんの前向きな発言からは、想像できないですけれど。
上田:もう逃げ道もないと思って、うつ病状態になりました。だけど、何とかそこで1回気持ちをリセットして、どうにか自分の元気を取り戻せる明かりが見えた。
国語辞典で「元気」と引くと、元気は天と地の間にあって、万物生成の生気であると。従って人間は、人間そのものが元気なんだと。オギャーと生まれて、元気な声を発声し、そして元気の海に帰るまで人間は元気なんです。
ところが元気がない、うつ病になる、というのは、これは元気じゃなくてマイナスエネルギーがたまっているからなんです。マイナスエネルギーをため込んで、ぱーんとはじけちゃうと終わってしまう。だから、それをため込まずにどこかに吐き出す必要がある。落ち込んだら、それを考えるんです。現状を深く、深く自分で悩むのではなくて、現状から抜ける明かりがどこかに必ずあります。
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