コンビニ大手ファミリーマートで発揮した優れた経営手腕のみならず、料理、読書、麻雀、釣り、ゴルフと、多彩な趣味を持つ上田準二さん。ユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長を退任し、取締役相談役となった今だから語れる秘蔵の経験や体験を基に、上田さんが若者からシニアまで、どんな悩みにも答えます。上田さんの波乱万丈の人生を聞けば、誰もがきっと“元気”になる。連載4回目の相談は、営業がうまくできないという、25歳、男性会社員の悩み。
私は理系で、研究職や開発職を志望していたのですが、なぜか営業に配属されてしまい、既に3年が過ぎました。しかし、未だに取引先と親しくなれず、接待の飲み会でも話を盛り上げることができません。当然、営業成績も伸びません。自分なりに業界のことを勉強したり、足繁く取引先を訪問したりしているのですが。ここで逃げたら負け犬になるので、もうすこし頑張りたいのですが、どうしたら取引先の懐に入り込めるのでしょうか。
25歳 男性(会社員)

大竹剛(日経ビジネス):研究職を志望していたのに営業に配属となり、さぞかし、戸惑ったことでしょうね。営業成績が上がらなければ、なおさらでしょう。それでも、「ここで逃げたら負け犬になる。もう少し頑張りたい」と、前向きです。上田さん、こんな部下がいたら、どうやって励ましますか。
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス取締役相談役):ぜひ、頑張ってほしいですね。前回も少し話しましたが、僕は伊藤忠商事に入社して2年目に、大阪に配属になりました。初めての営業です。当時、まだマーケットが小さかった輸入牛肉の販売で、ほとんどが新規のお客さん。ホテル、レストラン、スーパーでも輸入牛肉はなかなか置いてない時代でしたから、もうほぼ全部が新規の取引先ですよね。だけど相手があっての取引だから、とにかく手当たり次第、営業に行きましたよ。
大竹:手当たり次第、行ったんですか。
上田:ええ、手当たり次第。ただし、ちゃんと企業情報だとかで、どれだけの取扱高があるかとかは、もちろん調べましたよ。食肉市場に行って、東京なら芝浦の食肉市場のような場所ですよね、そこには大手の食肉問屋がみんな競りに来ているわけです。だいたい、そこでたくさん競り落としているのは大きな会社の社長さんだろうと見当を付けて、勝手に名刺を出して、手当たり次第に「社長!」と声を掛けていまいた。
大竹:相手が誰だろうと「社長」だなんて、ずいぶんと適当ですが、なんだか上田さんらしい。
上田:そうそう、もう口癖になっちゃった。しまいには、お客さんなら誰にでも、「社長さん、元気ですか」と聞くようになっちゃた。
それでも、相手はものすごく怖い人も多いわけです。強面で、何を言っても、うんともすんとも言ってくれない人も多かった。話を聞いてくれても、そんなものはうちは取り扱わんと、けんもほろろで、うまくいかない。今回、悩みを寄せてくれたこの方は、今、ちょうどそんな段階だと思うんですね。
まずは、もう少し頑張って、毎日、取引先のところに行ってみてください。セールストークができなくても、とにかく行ってみてください。
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