1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)

大竹:今回、相談を寄せてくれた女性は、育児を一段落して昇進の出遅れを取り戻そうと仕事を頑張り、昇格を期待していたにもかかわらず、昇格が見送られてやる気を失いつつあります。

上田:そうだね。彼女は非常に頑張り屋であるし、仕事をこなす能力もおそらく、申し分ないと思うんですよ。だけど、心の持ち方で自分をマイナスにしてしまっているよね。

 まず、子供をちゃんと育てるために時短勤務も活用しながら仕事と育児をなんとか両立させてきた。それは素晴らしいことですよ。自分をしっかりほめてあげてください。

 ただ、やはり時短勤務では、フルタイムで勤務している人と比べて、どうしても仕事の成果では差がついてしまう。時短勤務ではなかなか回せない仕事も会社にはあるよね。そういう仕事を時短勤務の彼女に無理にやってもらうわけにはいかない。そのような状況で、フルタイムでやっている仕事ができる同期の人と比べたときに、彼女の評価を下げるというわけではなくて、フルタイムで仕事ができる同期の人の評価がプラスになるのは、仕方がない。ただ、それは時短で働く彼女をマイナス評価にしているわけではないということです。そういう現実は、ある程度、割り切ってしまったほうがいい。

 だけど、そういう働き方をした結果、自分の昇進や出世が遅れたからといって、それで引け目を感じることなんてなにもないよ。彼女はその間、ほかのことでものすごく、社会に貢献していたわけだからね。子供、育児、ご主人のケアをやっていたわけで、その評価は出世とは関係ないかもしれないけど、自分の人生の中でそのような時期を過ごしたということに誇りを持つべきなの。

 会社での昇進、出世というところに目が奪われてしまうと、マイナスのオーラが出てしまうよ。マイナスのオーラが職場で出始めると、「私は努力している」と思っていても、同僚や上司にはマイナスオーラが感じられてしまうのよね。

大竹:そういうものですか。

上田:うん。頑張って髪を振り乱して一生懸命やっていても、何となく「昇進、昇格」と目が言っていると、せっかくの彼女の優れた部分が発揮されないのではないかと。ミスするんじゃないか、失敗してしまうんじゃないかと、周囲には見えてしまうのものなんだ。そういうのが、マイナスのオーラなんだよ。

「昇進」を目指すとマイナスのオーラが出る

大竹:気もそぞろと言うんですかね。目の前の仕事、プロジェクトに集中できないというか、会社からの評価を気にするあまり、肩に力が入りすぎているというか、そういうことでしょうか。

上田:「ここで失敗しちゃいけない」と力が入ることで、逆に単純なミスをしてしまうというかね。そういったことは、よくあるんですよ。私も、そういう部下をたくさん見てきましたから。

 だから、彼女にはぜひ、マイナスのオーラをプラスのオーラに変えていってほしいんです。むしろ、時短で働いたり、子育てに力を注いでいたりしていたときは、仕事と育児を両立しながら、むしろプラスのオーラが出ていたのではないかな。育児と仕事、両方にプライドを持って取り組んでいる前向きな姿を周囲も見ていたからこそ、子育てが一段落して完全に職場に復帰した際に、チャンスも与えられたんだと思う。

 彼女はきっと、本来は明るいプラスのオーラを出して、それが周囲にいい影響を与える人なんだと思う。だから、1年もムダにしたくないとか、そういう必死の形相で仕事に挑むのではなくて、肩の力を抜いて自然体で目の前のプロジェクトで最大の成果を出そうと頑張れば、きっと彼女自身も周囲の見方も、変わると思うよ。

大竹:遅れを取り戻さないと経営幹部になれない、という危機感が強いようです。

上田:だけど、深夜残業したからといって、それは仕事の成果とも昇進とも必ずしも関係ないよね。むしろ、後輩などにも仕事を任せながら、仕事と家庭のバランスを取る。せっかく、育児と仕事を両立してきた経験があるのだから、そういう働き方を続けながら成果を出すにはどうするかを、考えてみてはどうかな。

 周囲と同じように働いて「何としてでも昇進」と考えるのではなく、チーム全体でもっと明るく楽しく、仕事をすることを考えるんです。楽しく仕事をするから、充実感も味わえて、それがまた、職場全体に明るさももたらす。その結果、仕事の成果だって良くなりますよ。

大竹:この方は、「私にとっての昇格は、頑張ったご褒美的なモチベーションの源泉」ともおっしゃっています。

上田:もちろん、そういう側面あるよ。誰だって、仕事の成果を評価されたら嬉しいし、昇進は評価されたことの証だからね。

 だけど、本来は昇進というご褒美がほしくて働くのではなくて、いい仕事をするために働いて、その結果、ご褒美として昇進がついてくることもあるということだよね。何のために仕事をするのかといえば、お客さまに喜んでもらうためであり、最終的には世の中を少しでも良くしたいからだよね。青臭いかもしれないけれど、そう考えないと仕事が面白くなくなるよ。

 だから今は、与えられた部署、与えられた仕事の中で、自分がどれだけ輝けるかということに集中すべきであって、その先のことは考えない方がいい。そうすれば、プラスのオーラがどんどん出てくると思います。