仕事に取り掛かるのが遅くても問題ない

大竹:むしろ、すごく優秀なのではないかと。期日ぎりぎりに仕事に取り掛かっても、きちっと間に合わせられているのは、自分の仕事のスピードも、仕事の難易度もしっかり予測できているからこそ、なせる業ですよね。

上田:うん、そう。だからあなたは、ぎりぎりの時間まで来ないと、そこに集中できない人なんだと。

 それなのに、1週間前、1カ月前からやれと言っても、逆に緩慢に物事を考えてしまって、きちっとしたものは出来上がらないよ。時間に追い詰められて、一気に集中してパフォーマンスを出し切るのが、あなたという個性なんです。時間的な余裕をもって仕事に取り掛かっても、頭の中を整理できないと思うんだ。

 仕事に取り掛かるのが遅くても、それまでの時間も実は助走期間として重要な役割を果たしているということもある。あれをこうしようかな、これをこう、いやいやだめ、いや、これは面白くないな、ああ、こんなことをやってもうまくいかない、とか。本当はずいぶん前から、頭の中であれこれ考えて準備しているはずなんだよ。

 で、彼女は週末に会社に出てやろうとしたのに、何をしてしまったんだっけ?

大竹:ネットニュースを見て時間を過ごしてしまったそうです。

上田:ネットニュースを見たんだね。これも実は、仕事のことを考えながら見ていたんだと思うよ。なかなか仕事の完成形が見えてこない中で、ちょっとニュースでも見ようかと。ニュースもね、仕事と完全に無関係かというと、そうではない。凶悪な事件のニュースを見て、何でこんな異様な事件が起こるのか、なんて考えるでしょう。でもそれは、異常なことは仕事でもあり得るなとか思いながら見ているんだよ。

 こういう人は、何をやっていても、仕事のことを常に頭の隅で考えているんだ。だからこそ、時間ぎりぎりになって始めたとしても、無意識のうちに既に答えが出来上がっているから、間に合うんだよ。

 何でこんなにリアルに分かるかと言うと、僕もね、かなりこれに近い状態だからね。一応、思いついた要旨やポイントは事前にメモをしておいたりするけれど、本格的に作業に着手するのは、いつもぎりぎりだね。仕事のことを考えつつも、怪我で4場所連続休場した横綱の稀勢の里は、初場所ではどんな活躍を見せるのかとか、いろいろなことがついつい気になってしまう。

大竹:気になっちゃう。

上田:そういう僕を見て、女房は文句を言ったりするんだ。「仕事をするならちゃんとやりなさい」と。だけど、決まって僕はこう言う。「お前はうるさいから2階へ行って好きなドラマでも見ておれ。これから本気でやるんだから」とね。

 で、気が付くと「あなた」と女房に起こされるわけ。2時間も寝ていることなんてざら。当然、女房は嫌味を言う。「やると言って私を2階に追い出しておいて、寝ているじゃないの」ってね。でも、僕は寝ながら考えているんだ(笑)。

大竹:だから、この方の気持ちがよく分かるわけですね。

上田:簡単な仕事だったら、ぱぱっと済ませちゃう主義だけど、2~3時間集中しないといけないような仕事の場合は、あまりにも締め切りより早く着手すると、かえってああでもない、こうでもないと、ぐずぐずしちゃうよ。

大竹:どうしてもね。

上田:それで2日前だとか1日前になって、もうまとめなきゃいけないという中で、ぎゅっと集中できるものだよね。集中力がないから早く取りかかってもぐずぐずしてしまうのではなくて、逆に集中力があるから締め切り間際になって一気にまとめられるんでしょう。

 だから、あんまりこのことで自分自身を嫌になる必要はありません。あなたはもう、早めに準備をしなくてはいけないということを、気になさる必要はないのです。あなたは、そういう人なのだから。締め切り間際になるまでの時間が、実は重要なんだと発想を転換してみてはどうですか。ダラダラと助走している時間の中で、曖昧模糊としていた仕事の完成形のイメージがだんだんと頭の中に浮かんできているんですよ。それに時間がかかるタイプの人間なんです。

 ただし、締め切りの前日にはきっちりと仕事に取り掛かるという習性は、失わないようにしてください。もし、それがなくなってしまったら、もう会社を辞めた方がいい。

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