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「まずは営業にとって、行動量が大切」

 特に若手の営業担当であれば、こういった方針やメッセージを、日々目にされていると思います。

 行動量とは具体的に言うと、以下のようなものです。

 「まずはテレアポを1日50件」

 「まずは飛び込みを1日30件」

 「まずは商談を月20件」

 このように行動目標が課されている営業現場は多く存在します。

「まずはたくさん行動してみなければ結果はついてこない」

「ある程度の量をこなすと、そこで行動の“量”が“質”に転化する」

 上司がこのようなメッセージで伝えてきたとしても、それを聞く側の皆さんとしては、「もっと効率の良いやり方があるのでは」とか「わかっていても、実際に行動量を増やすのはつらい」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

練習の成果として発揮する

 上司の言うことは、体験的・感覚的に何となくそうかなと思いつつも、信じるのがなかなか難しいという気持ちもあるでしょう。

 ロールプレーイングの練習を繰り返しているうちにサービス紹介をスムーズに行えるようになったりするのは、まさしく「練習量の賜物」です。しかし、練習をしている最中は、確かに楽なものではありません。

 また多かれ少なかれ、どんな人でも「たくさんやることで結果が出る」という経験と同じように「たくさんやっても、思うように結果が出ない」という体験もしています。

 筆者が営業コンサルティングでお付き合いしている企業でも、「ハイパフォーマーはたくさん行動している」ということは高い確率で言えるものの、「たくさん行動している人がハイパフォーマーになれるか」というと、必ずしもそうではありません。

 このあたりは、どのように考えたらよいのでしょうか?

組織行動から考えてみよう

 デービッド・コルブという組織行動学者は、「経験→振り返り→概念化→試行」という4段階の学習サイクルからなる「経験学習モデル」理論を提唱しています。経験学習モデルは、大まかに言いますとこのようなイメージです。

デービッド・コルブの経験学習モデル
デービッド・コルブの経験学習モデル
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 まずは何かをやってみる「経験」があります。それはうまくいく経験もうまくいかない経験もあるでしょうが、後からその要因について「振り返り」をしてみると、うまくいったならそれなりの、うまくいかなかったならそれなりの原因や理由として考えられるものが出てきます。

 そして、その振り返りから、自分なりに成功のポイントはこうではないかというのを「概念化」します。ただし、概念化してみただけではなく、実際に「試行(やってみる)」ことが必要です。これが、次の「経験」につながっていきます。

 これを、実際の営業におけるテレアポの場面で考えてみましょう。

 例えば、電話を何件かかけてみます(経験)。ここで、そのまま何も振り返らずに、同じトークでかけ続けながら、「どこかで、アポをいただけるラッキーなお客様に当たらないかな」と念じるだけでは、行動の質が上がりません。

失敗の理由を探ってみる

 何件かかけてみたところで、「比較的うまくいったところ」「うまくいかなかったところ」の違いに何かなかったかを考えてみます。これが「振り返り」です。

 ちょっとした違いがなかったかに注意を払いながら電話をかけていないと、振り返った際に何も出てきません。また、件数があまりにも少ないと、振り返る材料も乏しくなってしまいます。

 振り返ってみると、例えば、「●●という業種は、他の業種に比べて反応がよかった気がする」「電話口で▲▲のように伝えると、つないでもらえる確率が上がるかもしれない」のように、成功のポイントに関するアイデアが浮かんできます。この成功のポイントを、自分なりに言葉にしてみます。「特に●●という業種にターゲットを絞って、電話口で▲▲のように伝える」ここまでくると、あとは試してみるだけです。

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