「タイミングが早すぎる両親へのご挨拶」が、その気になっていない相手(目の前の本人)に対して持ちかけられることで、ときにそれが「躊躇する」「はぐらかす」という行動を誘発するわけです。まずは目の前の相手をしっかり巻き込んでから、なのです。

 では、冒頭の話に戻りましょう。

「ご自身は、どうお感じになりますか」

 担当者に対する上司の同席依頼に、先方から「そうですね、部長も今はかなり忙しくしておりますので…」と、それとなく躊躇するコメントが返ってきました。

 こちらの若手営業メンバーは、その返事に対してどう返してよいかわからず、少しの間、沈黙が場に走りました。「もう少しプッシュするのは強引すぎるだろうか」「とはいえ、目の前の担当者にだけアプローチしていても受注には結びつかなさそう…」。難しい局面です。

 私は、間を見計らって、担当者の方に質問しました。「ごく個人的なご意見で構わないのですが、○○さん(目の前にいる担当者のお名前)ご自身は、当社の提案に対して、どうお感じになりますか」

 私の質問に対して、担当者は「そうですね、私の意見ですか…」と、少し戸惑った反応を示されました。

 そこで、続けて私は「例えば、どちらかというと当社の提案が他のご提案よりも良さそうだとお感じになっているのか、それとも、当社の提案は他社様のご提案とあまり変わらないと感じられているのかで言うと、いずれに近いイメージでしょうか」と質問を深掘りしました。

 私の問いかけに対して、担当者の方は「私は個人的に、御社のご提案が良さそうだと感じているのですが、実は、上司が昨年お願いした会社さんのサービスも気に入っているところがありそうで、そのあたり、私がどう立ち回ったらいいのかなと思いまして…」と返答されました。

どのあたりをポジティブに感じているのか

 これは、さっきの図でいうところの「担当者は当社の味方だが、上司に影響をおよぼすことが難しい状態」(B)に当たります。ケースが特定されれば、アプローチは明確です。

 私は続けて、「個人的に当社のご提案を評価いただいているとのこと、ありがとうございます。もしよろしければ、具体的にどのあたりをポジティブに感じていらっしゃるのか、教えていただけませんか」と、担当者に対して投げかけました。

 そうすると、担当者の方は、当社の提案に対して良いと感じていることだけでなく、実は他社が行った昨年のサービス提供内容についても100%満足はされていない様子が見えてきました。

 私たちは、そこで担当者の方と一緒に「昨年を上回るものを実現するにはどうしたらよいか」のディスカッションをしましたが、後半になって、担当者の方は「できたら当社の提案でいきたい」という様子が見えてきました。

 打ち合わせの時間が終わり際にさしかった時、担当者はおっしゃいました。「私も、上司に対してどう持ちかけるかが見えてきました。もし可能でしたら、来週、上司と一緒に今日のような議論をしていただけないでしょうか」

 こうして、私たちは上司を交えたディスカッションに持ち込むことができ、無事に受注へと至りました。

 さて、「キーパーソンに会えない問題」について今回は書きました。「目の前の担当者の状況が見えていない中、焦って同席を依頼してしまう」というのは、「プロポーズ前の、早すぎる両親へのご挨拶」のようなものです。

 気が急いて担当者の心情や状況を無視したまま進めてしまうより、「まずは目の前の人をしっかりと巻き込む」ことによって、気持ちよく「イエス」のお返事をいただきたいものですね。

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