彼女になれなくても、良い友達でいたいの
このような状況を、私は講演や研修などで、よく「恋愛の告白」にたとえてお話します。
一緒に話していて楽しいが、少しわがままでマイペースな女性、Aさん。
口数はそれほど多くないが、性格が優しくて趣味も合う女性、Bさん。
そして、AさんとBさんの両方から告白された夢のような男性、C君。
AさんとBさんは、それぞれC君と長年の友達関係にあったとします。そして、C君から見て、AさんとBさんの魅力はトータルで「甲乙つけがたい」状況だとしましょう。そして、2人の告白がそれぞれこのようなせりふだったら、いかがでしょうか。
Aさん:「C君、あなたのことが好き! 付き合ってください」
Bさん:「C君、あなたのことが好き。でも、彼女になれなくても、良い友達でいたいの」
さて、C君としては、どちらの方が断りやすいでしょうか。
Bさんは、C君との関係が切れてしまうのを恐れて、「保険のかかった愛の告白」をしてしまっています。「もしダメでも…」という場合の答えを、予め自分から用意してしまっているのです。
クロージングでは熱い想いを伝える
さて、冒頭のケースに戻りましょう。もし読者の皆さんがA社の営業担当だったとして、受注を勝ち取ろうとするならどんなクロージングをしますか。もし、私が仮にA社営業マンと同じ状況に立たされたら、こう迫るでしょう。
「…ご説明は以上となります。ご検討のほど、よろしくお願いいたします! いつもだったら、『もし今回ダメでも、次も頑張ります』と言うところですが、今回の御社へのご提案は私にとって特別なんです。次はないものと覚悟を決めてベストの提案をお持ちしましたので、ぜひご決断ください!」
これによって、顧客側はA社に対して「結果次第ではまた御社からもご提案をいただきたいと思います」という断り文句を言えなくなります。
一方で、B社に対しては、こう断ることができます。
「大変申し訳ないのですが、今回は、他社様に発注させていただくことになりました。御社の提案は非常に魅力的だったのですが、もう1社さんの方が、コストが安くて、それに実績をかなりお持ちだったので…。御社もかなりきめ細かくご対応をいただけるとのことですが、当社も今回のようなケースには慣れておらず、まずは低コストで始められるご提案を今回は選ばせていただくことにしたのです」
提案内容に対して甲乙つけがたい状況であれば、顧客側の購買担当者は「断りやすい方を断る」という行動を取りやすくなります。そして、顧客が断る理由の材料は、実は営業マンが自分自身で作ってしまっていることが多いのです。
読者の皆さんも、ぜひ、今一度ご自分のトーク内容を振り返ってみてください。コンペで惜しくも敗れた際、自分の発したせりふの中に、「断りやすい材料」は混ざっていなかったでしょうか。
保険のかかった愛の告白ではなく、熱い想いを伝えてお客様のハートをがっちりとつかみたいですね。

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